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労働基準法改正とメンタルヘルス対策|連続勤務規制と勤務間インターバルの重要性

労働基準法改正で議論されている連続勤務規制と勤務間インターバル制度は、従業員のメンタルヘルス保護に直結します。2026年通常国会への法案提出は見送りとなりましたが、企業は今から対策を始めることが重要です。精神障害の労災認定基準との関係、企業が今から始めるべき対策を解説します。

労働基準法改正とメンタルヘルス対策|連続勤務規制と勤務間インターバルの重要性

この記事のまとめ

結論(2行で分かる)​ 労働基準法改正の議論では、連続勤務規制と勤務間インターバル制度が重要なテーマとなっています。2026年通常国会への法案提出は見送りとなりましたが、今後も議論は継続される見込みです。企業は法改正を待たず、従業員のメンタルヘルス保護と過労死防止のため、今から対策を始めることが重要です。

この記事の対象読者

  • 従業員の健康管理を担当する人事・労務担当者
  • 職場のメンタルヘルス対策を推進する産業保健スタッフ
  • 健康経営に取り組む経営者

ポイント(5ステップ)​

  1. 連続勤務とメンタルヘルスの関係を理解する
  2. 勤務間インターバルが心身に与える効果を知る
  3. 「つながらない権利」と心理的安全性の関係を把握する
  4. 精神障害の労災認定基準を確認する
  5. 法改正の議論を踏まえた対策を今から始める

よくある誤解3つ

  • 誤解1: 連続勤務は本人が希望すれば問題ない → 実際は2週間以上の連続勤務は労災認定基準で心理的負荷として評価される
  • 誤解2: 睡眠時間は個人の問題 → 実際は企業の安全配慮義務の範囲内
  • 誤解3: メンタルヘルス対策は年1回のストレスチェックで十分 → 実際は日常的な勤務管理が予防の基本

根拠: 厚生労働省「労働基準関係法制研究会報告書」(2025年1月)、「心理的負荷による精神障害の認定基準」(2023年9月改正)

数字・期限 早見表

項目内容
連続勤務と労災認定2週間以上の連続勤務は心理的負荷の評価対象
勤務間インターバル推奨時間11時間以上(EU基準)
睡眠時間と健康6時間未満の睡眠が続くと健康リスク上昇
精神障害の労災請求件数年間約3,000件(増加傾向)
ストレスチェック実施義務常時50人以上の事業場で年1回以上

なぜ労働時間規制とメンタルヘルスは関係するのか?

労働時間と心身の健康

長時間労働や連続勤務は、以下のメカニズムで従業員のメンタルヘルスに悪影響を及ぼします。

  1. 睡眠時間の減少: 十分な休息が取れず、疲労が蓄積
  2. 回復時間の不足: 心身のリカバリーが追いつかない
  3. 私生活との両立困難: 家族との時間や趣味の時間が確保できない
  4. ストレス対処能力の低下: 余裕がなくなり、ストレスへの対処が困難に

過労死等防止対策推進法との関係

過労死等防止対策推進法では、「過労死等」を以下のように定義しています。

  • 業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
  • 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡

労働基準法の改正議論は、この過労死等を防止するための具体的な施策として位置づけられています。

労働基準法改正の議論はどうなっている?

労働基準関係法制研究会報告書(2025年1月)

厚生労働省の「労働基準関係法制研究会」は、2025年1月8日に報告書を公表しました。約40年ぶりの労働基準法大改正に向けた検討内容をまとめたものです。

主な検討項目

項目検討内容
連続勤務の上限規制13日を超える連続勤務の禁止を提言
勤務間インターバル努力義務から義務化への法規制強化を検討
法定休日の特定法定休日の明確な特定義務
つながらない権利ガイドライン策定の検討

2026年通常国会への法案提出は見送り

2025年12月、厚生労働省は2026年通常国会への労働基準法改正案の提出を見送る方針を固めました。労働時間規制の緩和検討の指示や労働者側からの反対意見もあり、現状ではとりまとめが困難と判断されたためです。

ただし、議論が終了したわけではなく、今後も検討は継続される見込みです。企業としては、法改正の動向を注視しつつ、報告書で提言された内容を先取りして対策を進めることが重要です。

連続勤務はメンタルヘルスにどう影響する?

精神障害の労災認定基準における評価

厚生労働省の「心理的負荷による精神障害の認定基準」(2023年9月改正)では、長時間労働に関する評価項目が定められています。

評価項目心理的負荷の強度
2週間以上にわたる連続勤務中〜強
発病直前2か月間に月120時間以上の時間外労働
発病直前3か月間に月100時間以上の時間外労働

特に注目すべきは、「2週間以上にわたる連続勤務」が心理的負荷として評価される点です。

研究会報告書の提言との関連

労働基準関係法制研究会の報告書では、「13日を超える連続勤務をさせてはならない」という規定の新設を提言しています。この「13日」という数字は、上記の労災認定基準(2週間=14日)と整合性を持たせたものと考えられます。

現行の労基法では「4週間を通じて4日の休日を付与」する特例があり、理論上は極端な長期連続勤務が可能になってしまいます。報告書では、変形休日制の特例を2週2日に見直すことも検討されています。

連続勤務がもたらす具体的なリスク

  • 睡眠負債の蓄積: 休日がないと睡眠不足を解消できない
  • ストレスホルモンの増加: コルチゾールの分泌が続き、心身に悪影響
  • 判断力・集中力の低下: 事故やミスのリスク上昇
  • うつ病・適応障害のリスク: 精神疾患の発症リスクが高まる

勤務間インターバルがメンタルヘルスに与える効果とは?

インターバル確保の重要性

勤務間インターバル制度は、単なる労働時間規制ではなく、「睡眠時間の確保」を通じて従業員の健康を守る制度です。

11時間インターバルの内訳例

項目時間
睡眠7時間
食事・入浴2時間
通勤1.5時間
その他(準備等)0.5時間
合計11時間

11時間のインターバルでも、睡眠時間は7時間程度しか確保できません。これ以下になると、慢性的な睡眠不足に陥るリスクがあります。

義務化に向けた議論

研究会報告書では、現行の努力義務から義務化への法規制強化を検討しています。EU基準に近い11時間の確保を原則としつつ、業種や業務の特性に応じて9時間を最低ラインとする案が有力視されています。

睡眠とメンタルヘルスの関係

睡眠不足は、以下のようにメンタルヘルスに影響します。

  • 感情調整機能の低下: イライラしやすくなる、落ち込みやすくなる
  • 認知機能の低下: 集中力・記憶力・判断力が低下
  • ストレス耐性の低下: 小さなストレスでも大きな負担に感じる
  • うつ病のリスク上昇: 睡眠障害はうつ病の主要なリスク要因

企業における導入効果

勤務間インターバル制度を導入した企業では、以下のような効果が報告されています。

  • 従業員の睡眠時間の改善
  • ストレスチェックの結果改善
  • 離職率の低下
  • 生産性の向上

「つながらない権利」と心理的安全性の関係は?

テレワーク時代の新たな課題

テレワークの普及により、「勤務時間外でも業務連絡が来る」という状況が増えています。これは以下の点でメンタルヘルスに悪影響を及ぼします。

  • 心理的な緊張状態の継続: いつ連絡が来るかわからない不安
  • オン・オフの切り替え困難: 仕事から完全に離れられない
  • プライベート時間の侵食: 家族との時間、趣味の時間が中断される

研究会報告書の提言

報告書では、「つながらない権利」について、法律による直接規制ではなく、ガイドラインの策定を検討すべきとしています。

企業が整備すべきルールの例

  1. 勤務時間外のメール送信は原則禁止(送信予約機能の活用)
  2. 緊急連絡の定義と連絡方法の明確化
  3. 休日・深夜の連絡に対する返信義務の免除
  4. 管理職への教育・意識啓発

心理的安全性との関係

「勤務時間外に連絡しても問題ない」という職場文化は、心理的安全性を損なう要因になります。従業員が「休んでいても仕事のことを考えなければならない」と感じる職場では、メンタルヘルス不調のリスクが高まります。

企業が今から始めるべきメンタルヘルス対策は?

法改正の動向に関わらず、従業員のメンタルヘルス保護は企業の安全配慮義務の範囲内です。研究会報告書の提言を先取りして、今から対策を始めましょう。

Step 1: 現状の把握

まず、自社の労働時間とメンタルヘルスの状況を把握しましょう。

確認すべき項目

  • 連続勤務日数の実態(最大何日の連続勤務があるか)
  • 勤務間インターバルの実態(最短で何時間か)
  • ストレスチェックの結果(高ストレス者の割合、部署別傾向)
  • 残業時間の推移(月80時間超の従業員数)

Step 2: 勤怠管理の強化

勤怠管理システムを活用し、以下の項目をモニタリングできる体制を整えましょう。

  • 連続勤務日数のアラート設定(7日以上で警告等)
  • 勤務間インターバルの自動計算・表示
  • 月次の労働時間レポート作成

Step 3: ストレスチェックの活用

年1回のストレスチェックを、単なる法令遵守ではなく、職場改善のツールとして活用しましょう。

活用のポイント

  • 集団分析で部署別の傾向を把握
  • 高ストレス要因(仕事の量、コントロール度等)を特定
  • 経年比較で改善効果を測定

Step 4: 職場環境の改善

ストレスチェックの結果を踏まえ、以下のような職場環境改善を実施しましょう。

  • 業務量の適正化・業務分担の見直し
  • コミュニケーションの活性化
  • 上司のマネジメントスキル向上
  • 勤務時間外の連絡ルールの策定

Step 5: 継続的なモニタリング

一度の対策で終わらせず、継続的にモニタリングと改善を行いましょう。

  • 四半期ごとの労働時間分析
  • 年1回以上のストレスチェック実施
  • 改善策の効果検証と見直し

例外・特殊ケースの対応

繁忙期がある業種の場合

季節変動がある業種では、繁忙期の連続勤務が避けられないケースがあります。その場合は以下の対策を検討しましょう。

  • 繁忙期前後の十分な休息確保
  • 繁忙期中の定期的な面談実施
  • 代休取得の徹底

シフト勤務がある業種の場合

24時間稼働の業種では、以下の点に注意が必要です。

  • 夜勤明けの十分な休息時間確保
  • シフト間隔の適正化(最低11時間以上)
  • 夜勤従事者への健康診断の充実

ミニ用語集

用語意味
勤務間インターバル勤務終了から次の勤務開始までの休息時間
過労死等業務上の過重負荷による脳・心臓疾患や精神障害を原因とする死亡等
心理的負荷精神障害の労災認定で評価される業務上のストレス要因
高ストレス者ストレスチェックで基準を超えたストレス状態にある者
集団分析ストレスチェック結果を部署等の集団単位で分析すること
安全配慮義務使用者が労働者の生命・身体の安全を確保する義務

関連記事(MentalMapナレッジベース)

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労働基準法改正の議論を踏まえ、従業員のメンタルヘルス状態を継続的に把握・改善することが重要です。MentalMapは以下の機能で職場のメンタルヘルス対策をサポートします。

主な特徴:

  • ストレスチェック実施: 厚生労働省基準に準拠した高ストレス者判定。57項目版に加え、より詳細な80項目・120項目・141項目にも対応しています。
  • 集団分析: 部署別・属性別の集団分析で、連続勤務や長時間労働が多い部署のストレス傾向を可視化。職場環境改善に活用できます。
  • 自動リマインド: 未受検者への自動リマインドメール送信で、高い受検率を実現。終了1週間前・終了前日の2回自動送信に加え、手動での追加送信も可能です。
  • 監査ログ: すべての操作履歴を記録。改ざん防止機能により、法令遵守の証跡を確保できます。

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よくある質問

A. 厚生労働省の「心理的負荷による精神障害の認定基準」(2023年9月改正)では、2週間以上にわたる連続勤務が心理的負荷の評価対象となります。労働基準関係法制研究会の報告書(2025年1月)では、この基準を踏まえて13日超の連続勤務禁止が提言されています。

A. EU加盟国では11時間以上のインターバルが義務化されています。日本の研究会報告書でも11時間を原則としつつ、業種によっては9時間を最低ラインとする案が検討されています。11時間あれば、通勤・食事・入浴を除いても約7時間の睡眠時間を確保できます。

A. ストレスチェックの設問には「仕事の量」「働きがい」などの項目があり、過重労働の影響を間接的に把握できます。また、集団分析で残業時間が多い部署と高ストレス傾向の相関を分析することも可能です。

A. 完全禁止ではなく、ルールの策定が重要です。緊急連絡の定義、連絡方法(メールは予約送信等)、返信義務の有無を明確化し、管理職への教育を行うことで、従業員の心理的負担を軽減できます。研究会報告書でも、法律による直接規制ではなくガイドライン策定が検討されています。

A. 2026年通常国会への法案提出は見送りとなりましたが、議論は継続される見込みです。連続勤務日数・勤務間インターバルの実態把握、勤怠管理システムの見直し、ストレスチェック結果の活用、勤務時間外の連絡ルール策定が主な準備事項です。法改正を待たず、今から従業員の健康管理を強化することが重要です。

A. 2025年12月、厚生労働省は2026年通常国会への提出を見送る方針を固めました。労働時間規制の緩和検討の指示や労働者側からの反対意見があり、現状ではとりまとめが困難と判断されたためです。ただし、議論が終了したわけではなく、今後も検討は継続される見込みです。

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