ストレスチェックの外部委託|業者選定のポイントと委託時の注意点
ストレスチェックの外部委託について解説。委託できる業務範囲、委託先に求める実施者の資格要件、業者選定のチェックポイント、契約時の注意事項、個人情報の取り扱いまで。厚生労働省のチェックリストに基づく選定基準を紹介。

結論(2行で分かる) ストレスチェックは外部機関への委託が可能であり、実施者の確保が困難な企業や、プライバシー保護を重視する場合は委託が有効な選択肢となる。委託先選定では「実施者の資格」「個人情報管理体制」「面接指導対応」を必ず確認すること。
この記事の対象読者
- ストレスチェックの外部委託を検討している人事・総務担当者
- 委託先の選定基準を知りたい企業
- 50人未満で義務化に備えて外部委託を検討する事業場
ポイント(5つ)
- 外部委託できる業務:ストレスチェック実施、高ストレス者判定、結果通知、面接指導、データ保管
- 委託先には実施者(医師・保健師等)の確保が必須
- 産業医等を「共同実施者」として関与させることが推奨される
- 個人情報の取り扱いに関する契約を必ず締結する
- 守秘義務違反には罰則(6か月以下の懲役または50万円以下の罰金)がある
よくある誤解3つ
- 誤解1: 外部委託すれば事業者の責任はなくなる → 実際は事業者に実施義務が残る
- 誤解2: どの業者でも委託できる → 実際は実施者の資格要件を満たす必要がある
- 誤解3: 委託すれば社内の関与は不要 → 産業医等の共同実施者の関与が推奨される
根拠: 労働安全衛生法第66条の10、厚生労働省「ストレスチェック制度導入マニュアル」、「外部機関に委託する場合のチェックリスト例」
数字・期限・要件 早見表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 義務対象 | 常時50人以上の労働者を使用する事業場 |
| 50人未満義務化 | 2028年5月までに施行(令和7年5月14日公布、公布後3年以内に政令で定める日に施行) |
| 実施頻度 | 年1回以上 |
| 結果保存期間 | 5年間 |
| 守秘義務違反の罰則 | 6か月以下の懲役または50万円以下の罰金 |
| 報告義務違反の罰則 | 50万円以下の罰金 |
| 労基署報告 | 1年以内ごとに1回(様式第6号の2) |
ストレスチェックの外部委託とは?
外部委託できる業務の範囲
ストレスチェック制度において、事業者は必要に応じて以下の業務を外部機関に委託することができます。
| 委託可能な業務 | 内容 |
|---|---|
| ストレスチェックの実施 | 調査票の配布・回収・集計 |
| 高ストレス者の判定 | 実施者による結果評価・判定 |
| 結果の通知 | 個人結果の本人への通知 |
| 面接指導の実施 | 医師による高ストレス者への面談 |
| データの保管 | 結果記録の5年間保存 |
| 集団分析 | 部署・職種単位での集計・分析 |
委託先として想定される機関
厚生労働省のマニュアルでは、以下の機関が委託先として想定されています。
- 健康診断機関
- メンタルヘルスサービス機関
- 健康保険組合
- 病院・診療所
- EAP(従業員支援プログラム)提供機関
50人未満の事業場では、プライバシー保護の観点から外部委託が推奨されています。 小規模事業場では社内で実施すると個人が特定されやすく、従業員が安心して回答できない可能性があるためです。
なぜ外部委託を検討すべきか?
外部委託のメリット
| メリット | 説明 |
|---|---|
| 実施者の確保 | 社内に医師・保健師がいない場合でも実施可能 |
| プライバシー保護 | 社内の人間関係から独立した実施が可能 |
| 専門性の活用 | メンタルヘルスの専門機関のノウハウを活用 |
| 運用負荷の軽減 | 調査票の配布・回収・集計等の事務作業を委託 |
| 法令対応の確実性 | 制度に精通した機関による適切な運用 |
外部委託が特に有効なケース
- 産業医が選任されていない事業場(50人未満)
- 実施者要件を満たす社内人材がいない場合
- 小規模でプライバシー保護が困難な場合
- 多拠点で統一的な実施が必要な場合
- 多言語対応が必要な場合
委託先に求められる要件は?
実施者の資格要件
外部委託する場合でも、委託先には以下の資格を持つ実施者が必要です。
| 資格 | 研修の要否 |
|---|---|
| 医師 | 研修不要 |
| 保健師 | 研修不要 |
| 看護師 | 厚生労働大臣が定める研修の修了が必要 |
| 精神保健福祉士 | 厚生労働大臣が定める研修の修了が必要 |
| 歯科医師 | 厚生労働大臣が定める研修の修了が必要 |
| 公認心理師 | 厚生労働大臣が定める研修の修了が必要 |
委託先の実施者が適切な資格を有しているか、必ず確認してください。 資格要件を満たさない者がストレスチェックを実施した場合、法令に適合したストレスチェックとは認められません。
共同実施者の設定
厚生労働省のマニュアルでは、外部委託する場合でも事業場の産業医等を「共同実施者」として関与させることが推奨されています。
共同実施者の役割:
- 調査票や高ストレス者選定基準の決定時に意見を述べる
- 個々の労働者の面接指導の要否を確認する
- 事業場の状況を踏まえた判定・対応を行う
共同実施者を設定することで、外部機関と事業場内産業保健スタッフが密接に連携し、より適切なフォローアップが可能になります。
業者選定で確認すべきポイントは?
厚生労働省は「外部機関にストレスチェック及び面接指導の実施を委託する場合のチェックリスト例」を公開しています。以下の観点で委託先を評価してください。
1. 実施体制の確認
| チェック項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 管理体制 | 受託業務全体を管理する責任者が明確になっているか |
| 実施者の資格 | 医師・保健師等の資格を有する実施者が確保されているか |
| 面接指導体制 | 産業医資格を有する医師が確保されているか |
| 実施事務従事者 | 業務範囲が明確で、必要な範囲に限定されているか |
| 問い合わせ対応 | 労働者からの問い合わせに対応できる体制があるか |
| 連携体制 | 委託元の産業保健スタッフと連絡調整する体制があるか |
2. 調査票・評価方法の確認
| チェック項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 調査票の選定 | 実施者が調査票の選定・評価方法の決定に関与しているか |
| 法令要件 | 3領域(ストレス要因・心身のストレス反応・周囲のサポート)を含むか |
| 標準調査票 | 57項目または23項目以外の場合、適切な調査票か |
3. 結果通知・セキュリティの確認
| チェック項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 結果通知方法 | 第三者に知られない形で本人に直接通知されるか |
| 通知内容 | ストレス状況・高ストレス該当・面接指導要否を含むか |
| 緊急対応 | 緊急時に産業保健スタッフとの連絡調整ができるか |
| 記録保存 | 5年間保存の具体的方法と施設・設備が整備されているか |
| セキュリティ | 第三者が結果を閲覧できない十分な対策があるか |
4. 情報管理・システムの確認
| チェック項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| パスワード管理 | システムへのログインパスワードが適切に管理されているか |
| 不正アクセス防止 | セキュリティ対策は万全か |
| アクセス制限 | 結果へのアクセスが実施者・本人に限定されているか |
| 認証取得 | ISMS・Pマーク等のセキュリティ認証を取得しているか |
契約時に注意すべき事項は?
必ず契約に含めるべき事項
外部委託する際は、以下の事項を契約書に明記してください。
| 契約事項 | 内容 |
|---|---|
| 業務範囲 | 委託する業務の具体的な範囲と内容 |
| 実施者の明示 | 実施者となる医師・保健師等の氏名と資格 |
| 守秘義務 | 知り得た情報の秘密保持義務 |
| 個人情報の取り扱い | 個人情報の管理方法、第三者提供の禁止 |
| 結果の取り扱い | 本人同意なく事業者に提供しないこと |
| 記録の保存 | 保存期間(5年間)と保存方法 |
| 契約終了時の取り扱い | データの返却・消去の方法 |
| 再委託の制限 | 再委託の可否と条件 |
| 損害賠償 | 情報漏洩等があった場合の賠償責任 |
個人情報の取り扱いに関する契約
ストレスチェックでは従業員の心理的負担に関する機微な情報を取り扱うため、個人情報の取り扱いについて特に注意が必要です。
契約に含めるべき個人情報保護条項:
- 目的外利用の禁止: ストレスチェック実施以外の目的での利用を禁止
- 第三者提供の制限: 本人同意なく第三者(事業者を含む)への提供を禁止
- 安全管理措置: 漏洩・滅失・毀損を防止するための措置
- 従業者の監督: 委託先の従業者に対する監督義務
- 再委託の制限: 再委託する場合の同等の義務負担
- 契約終了時の措置: 個人情報の返却または安全な消去
労働安全衛生法第105条により、ストレスチェックに関わる者には守秘義務が課せられています。 違反した場合は、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金の対象となります(労働安全衛生法第119条)。
外部委託しても事業者に残る責任は?
外部委託しても残る事業者の義務
外部委託した場合でも、以下の義務は事業者に残ります。
| 義務 | 内容 |
|---|---|
| 実施義務 | ストレスチェックを確実に実施させる義務 |
| 委託先の監督 | 適切な委託先を選定し、監督する義務 |
| 労基署への報告 | 実施結果を労働基準監督署へ報告する義務 |
| 面接指導後の措置 | 医師の意見を踏まえた就業上の措置を講じる義務 |
| 不利益取扱いの禁止 | 結果を理由とした不利益取扱いを行わない義務 |
委託先の監督のポイント
- 定期的な報告の受領: 実施状況、受検率、高ストレス者の割合等
- セキュリティ監査: 個人情報の管理状況の確認
- 問題発生時の対応: 連絡体制と対応手順の確認
- 契約内容の遵守確認: 契約事項が適切に履行されているか
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ミニ用語集
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 外部委託 | ストレスチェックの実施業務を外部機関に委託すること |
| 実施者 | ストレスチェックを実施する医師・保健師等の有資格者 |
| 共同実施者 | 外部委託時に事業場側から参加する実施者(産業医等) |
| 実施事務従事者 | 実施者の指示のもとで事務を行う者。人事権を有する者は就任不可 |
| 守秘義務 | ストレスチェックで知り得た情報を漏らしてはならない義務 |
| 地域産業保健センター | 50人未満事業場向けの無料支援機関 |
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実施体制の柔軟性
- 貴社の産業医・保健師を実施者として登録可能
- 外部の実施者との連携にも対応
- 実施者・実施事務従事者の権限分離機能
法令対応
- 厚生労働省基準に準拠した高ストレス者判定
- 人事権を有する者のアクセス制限機能
- 全操作履歴の監査ログ(5年間保存)
- 労基署報告書(様式第6号の2)の自動出力
セキュリティ
- 個人結果は本人のみ閲覧可能(本人同意なしに事業者へ提供されない)
- 不正アクセス防止のセキュリティ対策
- データの暗号化保存
運用支援
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料金体系
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参考文献・出典
よくある質問
A. 主なメリットは、実施者(医師・保健師等)の確保が容易になること、プライバシー保護が強化されること、専門機関のノウハウを活用できること、運用負荷を軽減できることです。特に50人未満の事業場では、プライバシー保護の観点から外部委託が推奨されています。
A. 最も重要なのは「実施者の資格要件」「個人情報管理体制」「面接指導対応」の3点です。委託先に医師・保健師等の有資格者がいるか、セキュリティ対策が十分か、高ストレス者への面接指導まで対応可能かを必ず確認してください。
A. はい、残ります。外部委託した場合でも、ストレスチェックの実施義務、委託先の監督義務、労基署への報告義務、面接指導後の措置を講じる義務、不利益取扱いを行わない義務は事業者に残ります。
A. 業務範囲と実施者の明示、守秘義務と個人情報の取り扱い、本人同意なく事業者に結果提供しないこと、記録の5年間保存、契約終了時のデータ処理方法を必ず契約書に含めてください。守秘義務違反には罰則があります。