ストレスチェック調査票の選び方|57項目・80項目・120項目の使い分け
ストレスチェック調査票の選び方を解説。57項目・80項目・120項目の違い、企業規模・目的別のおすすめ、独自項目追加の注意点を厚生労働省・こころの耳の情報に基づいて説明します。

結論(2行で分かる) 法定義務だけなら57項目版で十分。職場環境改善まで取り組むなら80項目版以上を選択し、より詳細な分析には120項目版が効果的です。
対象読者: 調査票を選定中の人事担当者、衛生管理者、実施者
選び方の3ステップ
- 目的を明確にする(法令対応のみ or 職場改善まで)
- 回答負担と得られる情報のバランスを検討
- 独自項目の追加が必要か確認
よくある誤解3つ
- 「項目数が多いほど高ストレス者が増える」→ 高ストレス判定は57項目部分で行うため変わらない
- 「80項目と120項目は同じ尺度だから同じ」→ 80項目は短縮版、120項目が標準版で精度が異なる
- 「独自項目を自由に追加できる」→ 法定3領域を満たす設問が必須
根拠: 厚生労働省「ストレスチェック制度実施マニュアル」、こころの耳「ストレスチェック制度について」
数字・回答時間 早見表
| 項目数 | 測定できる項目の種類 | 回答時間目安 | おすすめの企業 |
|---|---|---|---|
| 57項目 | 20種類(基本的なストレス状態) | 約5〜10分 | 初導入、法令遵守が目的 |
| 80項目 | 42種類(職場環境の詳細も含む) | 約10〜15分 | 職場改善のヒントが欲しい |
| 120項目 | 42種類(より高精度で測定) | 約15〜20分 | 詳細な集団分析・部署比較 |
| 141項目 | 49種類(研究レベルの詳細) | 約20〜25分 | 研究目的・健康経営の本格推進 |
※「測定できる項目の種類」とは、「仕事の量」「イライラ感」「上司のサポート」など、分析できる観点の数です。専門用語では「尺度(スケール)」と呼びます。
ストレスチェック調査票とは何か?
ストレスチェック調査票は、従業員のストレス状態を把握するための質問票です。
労働安全衛生法に基づき、以下の法定3領域を含む調査票を使用することが義務付けられています。
法定3領域とは?
| 領域 | 内容 | 設問例 |
|---|---|---|
| 仕事のストレス要因 | 職場における心理的負担の原因 | 「非常にたくさんの仕事をしなければならない」 |
| 心身のストレス反応 | 心理的負担による心身の自覚症状 | 「ひどく疲れた」「ゆううつだ」 |
| 周囲のサポート | 職場の他の労働者からの支援 | 「上司はどのくらい気軽に話ができますか」 |
厚生労働省は「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」の使用が望ましいとしています。この3領域を満たしていれば、事業場独自の調査票を使用することも可能です。
57項目版—法令遵守の標準版
57項目版は、厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」の標準版です。
57項目版の構成
| セクション | 設問数 | 内容 |
|---|---|---|
| A. 仕事について | 17問 | 仕事の量・質・コントロール度など |
| B. 最近1ヶ月の状態 | 29問 | 活気、イライラ、疲労、不安、抑うつ、身体愁訴 |
| C. 周りの方々について | 9問 | 上司・同僚・家族のサポート |
| D. 満足度 | 2問 | 仕事・家庭生活への満足度 |
57項目版のメリット
- 回答時間が短い(約5〜10分)
- 法令要件を確実に満たす
- 厚労省実施プログラムが利用可能(無料)
- 全国平均との比較が容易
57項目版のデメリット
- 職場環境改善のための詳細情報が限られる
- ハラスメントやワークエンゲージメントは測定できない
57項目版が向いている企業
- 初めてストレスチェックを導入する企業
- まずは法令遵守を確実にしたい企業
- 従業員の回答負担を最小限にしたい企業
80項目版—職場改善のための拡張版
80項目版は、57項目に「新職業性ストレス簡易調査票」の推奨尺度セット短縮版(23項目)を追加した調査票です。
80項目版で追加される設問
57項目に加えて、以下の領域が追加されます。
| 追加領域 | 内容 | 何が分かるか |
|---|---|---|
| ワーク・エンゲージメント | 仕事への熱意・活力 | 従業員のやりがい度合い |
| 職場のハラスメント | いじめ・パワハラの有無 | ハラスメントリスク |
| 職場の一体感 | チームワーク・連帯感 | 組織の健全性 |
| 上司のリーダーシップ(短縮版) | マネジメントの質 | 管理職の課題 |
| 公正な人事評価(短縮版) | 評価への納得感 | 人事制度の課題 |
| キャリア形成 | 成長機会の有無 | 育成環境の充実度 |
80項目版のメリット
- 57項目より詳細な職場分析が可能
- ハラスメントリスクを可視化
- ワークエンゲージメントを測定
- 回答時間は約10〜15分と許容範囲
80項目版のデメリット
- 追加尺度は「短縮版」のため精度がやや劣る
- 120項目版ほど詳細な分析はできない
80項目版が向いている企業
- 職場環境改善に取り組みたいが設問数は抑えたい企業
- ハラスメント対策の実態把握が必要な企業
- 健康経営に取り組み始めた企業
120項目版—詳細分析の標準版
120項目版は、57項目に「新職業性ストレス簡易調査票」の推奨尺度セット標準版(63項目)を追加した調査票です。
80項目版との違いは何か?
| 比較項目 | 80項目版 | 120項目版 |
|---|---|---|
| 追加設問数 | 23問 | 63問 |
| 尺度の種類 | 推奨尺度セット短縮版 | 推奨尺度セット標準版 |
| 各尺度の設問数 | 1〜2問程度 | 3問以上 |
| 測定精度 | やや低い | 高い |
| 回答時間 | 約10〜15分 | 約15〜20分 |
80項目版と120項目版は同じ42種類の項目を測定しますが、精度が異なります。 例えば「上司のリーダーシップ」を測定する場合、80項目版では1〜2問しか質問しませんが、120項目版では3問以上で測定します。質問数が多いほど、より正確な結果が得られます。詳細な分析や経年比較には120項目版が適しています。
120項目版で詳しく測定できる尺度
| 尺度 | 80項目 | 120項目 | 詳細 |
|---|---|---|---|
| 上司のリーダーシップ | 短縮版 | 標準版 | マネジメントの質を詳細に把握 |
| 公正な人事評価 | 短縮版 | 標準版 | 評価制度への納得感 |
| 仕事の資源 | 短縮版 | 標準版 | 裁量権・成長機会など |
| 職場の資源 | 短縮版 | 標準版 | 環境・制度の充実度 |
120項目版のメリット
- 全42尺度を高精度で測定
- 部署間比較・経年変化の分析に最適
- 職場環境改善の具体的なヒントが得られる
- 健康経営度調査への対応がしやすい
120項目版のデメリット
- 回答時間が15〜20分とやや長い
- 従業員への説明・動機づけが必要
120項目版が向いている企業
- 職場環境改善に本格的に取り組む企業
- 部署ごとの課題を詳細に把握したい企業
- 健康経営優良法人認定を目指す企業
141項目版—研究レベルのフルセット
141項目版は、新職業性ストレス簡易調査票の全項目を含むフルセットです。
141項目版で追加される尺度
120項目版の42尺度に加えて、以下が測定可能になります。
| 追加尺度 | 内容 |
|---|---|
| 職務遂行 | 仕事のパフォーマンス |
| 創造性の発揮 | イノベーションへの貢献 |
| 職場での学習 | 学習機会の活用度 |
| 積極的な問題解決 | ストレス対処行動 |
| 回避と我慢 | 消極的な対処行動 |
141項目版が向いている企業
- 全49尺度をフル活用したい企業
- 従業員のパフォーマンス向上を目指す企業
- 研究機関と連携した分析を行う企業
高ストレス判定は項目数で変わるか?
変わりません。
高ストレス判定は、どの調査票を使用しても57項目部分の回答のみで行われます。
| 項目数 | 高ストレス判定に使用する設問 | 追加設問の用途 |
|---|---|---|
| 57項目 | 1〜57番 | - |
| 80項目 | 1〜57番 | 職場環境分析 |
| 120項目 | 1〜57番 | 職場環境分析 |
| 141項目 | 1〜57番 | 職場環境分析・アウトカム |
「80項目や120項目を選ぶと高ストレス者が増える」ことはありません。 追加設問は集団分析や職場環境改善のためのデータとして活用されます。判定基準はどの調査票でも同じです。
企業規模・目的別 選び方ガイド
従業員50人未満の中小企業
おすすめ: 57項目版
- まずは法令遵守を確実に
- 産業保健総合支援センターの無料支援を活用
- 体制が整ったら80項目版へ移行を検討
従業員50〜300人の中堅企業
おすすめ: 80項目版または120項目版
- 職場環境改善に活用するなら80項目以上
- 部署ごとの課題把握が必要なら120項目版
- 健康経営優良法人認定を目指すなら120項目版
従業員300人以上の大企業
おすすめ: 120項目版
- 詳細な部署間比較・経年変化分析に最適
- 健康経営度調査の指標としても活用可能
- パフォーマンス測定が必要なら141項目版
目的別おすすめ
| 目的 | おすすめ項目数 | 理由 |
|---|---|---|
| 法令遵守のみ | 57項目 | 最小限の負担で義務を果たせる |
| ハラスメント対策 | 80項目以上 | ハラスメント尺度が追加される |
| 職場環境改善 | 120項目 | 詳細な分析が可能 |
| 健康経営推進 | 120項目 | エンゲージメント等の指標が充実 |
| 研究・詳細分析 | 141項目 | 全尺度をフル活用 |
独自項目を追加する際の注意点
事業場独自の設問を追加することは可能ですが、以下の点に注意が必要です。
法定3領域を必ず含める
独自調査票を作成する場合でも、法定3領域(仕事のストレス要因・心身のストレス反応・周囲のサポート)を含む設問が必須です。
衛生委員会での審議
調査票の選定は、実施者の意見を踏まえ、衛生委員会で審議することが求められます。独自項目を追加する場合は、その必要性と妥当性を審議してください。
高ストレス判定への影響
独自項目を高ストレス判定に使用する場合は、選定基準を明確に定め、衛生委員会で審議する必要があります。
追加項目の例
多くの企業で追加されている項目の例:
| 追加項目 | 目的 |
|---|---|
| テレワーク環境に関する設問 | 在宅勤務のストレス要因把握 |
| 育児・介護に関する設問 | ワークライフバランスの課題把握 |
| 会社固有の制度に関する設問 | 福利厚生の活用状況確認 |
独自項目を多く追加すると回答時間が長くなり、受検率低下の原因になります。 本当に必要な項目に絞り込むことが重要です。
調査票を途中で変更できるか?
変更は可能ですが、経年比較が難しくなります。
項目数を増やす場合(例: 57項目→120項目)
- 高ストレス判定は57項目部分で行うため、判定結果の経年比較は可能
- 追加尺度の経年データがないため、「初年度」として再スタート
項目数を減らす場合(例: 120項目→57項目)
- 追加尺度のトレンドが途切れる
- 職場環境改善のPDCAが回しづらくなる
調査票の項目数は、最初の選択が重要です。 将来の活用を見据えて、できれば80項目以上で開始することをおすすめします。
ミニ用語集
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 職業性ストレス簡易調査票(BJSQ) | 厚生労働省が推奨する57項目の標準調査票。20尺度で構成 |
| 新職業性ストレス簡易調査票(New BJSQ) | 東京大学が開発した拡張調査票。42〜49尺度を測定可能 |
| 推奨尺度セット短縮版 | New BJSQの23項目版。80項目調査票で使用 |
| 推奨尺度セット標準版 | New BJSQの63項目版。120項目調査票で使用 |
| 法定3領域 | 仕事のストレス要因・心身のストレス反応・周囲のサポート |
| 衛生委員会 | 労使で構成される安全衛生に関する審議機関 |
まとめ—調査票選びのポイント
押さえるべきポイント
- 法定3領域(仕事のストレス要因・心身のストレス反応・周囲のサポート)は必須
- 57項目版は法令遵守に十分、職場改善には80項目以上
- 80項目版は短縮版、120項目版が標準版—精度が異なる
- 高ストレス判定はどの項目数でも57項目部分で行う
- 調査票は途中で変更可能だが、経年比較が難しくなる
関連記事
- ストレスチェック制度とは? — 制度の概要と実施手順
- 57項目・80項目・120項目・141項目の設問内容比較 — 設問の詳細を解説
- 57項目版の採点方法と計算式 — 素点換算表・判定基準を解説
- 高ストレス者への対応ガイド — 面談の進め方、拒否された場合の対応
MentalMapの調査票対応
MentalMapは、57項目・80項目・120項目・141項目のすべての調査票に対応しています。
| 機能 | 対応内容 |
|---|---|
| 調査票 | 57・80・120・141項目すべて対応 |
| 尺度計算 | BJSQ(20尺度)とNew BJSQ(42〜49尺度)を自動計算 |
| 高ストレス判定 | 厚労省基準(素点換算表法)で自動判定 |
| 集団分析 | 部署別・属性別のレポートを自動生成 |
| 多言語対応 | 12カ国語に対応(追加料金なし) |
「どの調査票を選べばいいか分からない」という方も、無料相談でサポートします。
参考文献・出典
よくある質問
A. 法令遵守のみなら57項目版、職場環境改善まで取り組むなら120項目版がおすすめです。80項目版は短縮版のため精度がやや劣ります。
A. 57項目は法令要件を満たす標準版(20尺度)、80項目は職場環境分析のための拡張版(42尺度)です。80項目版ではワークエンゲージメント、ハラスメント、上司のリーダーシップなどが測定できます。
A. 迷ったら120項目版をおすすめします。80項目版は拡張尺度の「短縮版」のため精度がやや劣り、120項目版が「標準版」で高精度な分析が可能です。
A. 可能ですが、法定3領域(仕事のストレス要因・心身のストレス反応・周囲のサポート)を必ず含める必要があります。追加項目は衛生委員会で審議してください。
A. いいえ、増えません。高ストレス判定は57項目部分で行われるため、80項目や120項目を選んでも判定基準は同じです。追加設問は職場環境分析に使用されます。
A. 変更は可能ですが、経年比較が難しくなります。将来の活用を見据えて、最初から80項目以上で開始することをおすすめします。