高ストレス者への対応マニュアル|面談から職場復帰まで人事担当者が知るべき全手順
高ストレス者への対応を徹底解説。面接指導の流れ、医師からの意見聴取、事後措置、法的義務まで、人事・総務担当者が知るべき全手順をまとめました。

結論(2行で分かる) 高ストレス者から面接指導の申出があったら1ヶ月以内に医師面談を実施。拒否されても再勧奨とEAP案内を行い、対応記録を必ず残す(安全配慮義務の証拠)。
対象読者: 人事・総務担当者、衛生管理者、産業保健スタッフ
対応の5ステップ
- 結果通知と面接指導の案内(本人のみに通知)
- 面接指導の申出受付(申出は任意)
- 医師による面接指導の実施(申出後1ヶ月以内)
- 医師からの意見聴取(面接後1ヶ月以内)
- 事後措置の実施(就業制限、職場環境改善など)
よくある誤解3つ
- ✗「高ストレス者の情報は会社に共有される」→ ○ 本人同意がなければ事業者に通知されない
- ✗「面接指導を強制できる」→ ○ 申出は任意。強制はNG、再勧奨と代替手段の案内が正解
- ✗「放置しても問題ない」→ ○ 安全配慮義務違反となり、労災認定や損害賠償のリスク
根拠: 労働安全衛生法第66条の10、厚生労働省「ストレスチェック制度導入マニュアル」
期限・保存年限 早見表
| ステップ | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 結果通知 | 遅滞なく | 労働安全衛生規則第52条の12 |
| 面接指導の申出 | 結果通知後1ヶ月以内 | 厚労省マニュアル |
| 面接指導の実施 | 申出後1ヶ月以内 | 労働安全衛生規則第52条の16 |
| 医師からの意見聴取 | 面接指導後1ヶ月以内 | 労働安全衛生規則第52条の18 |
| 事後措置の実施 | 意見聴取後遅滞なく | 労働安全衛生法第66条の10 |
| 記録の保存 | 5年間 | 労働安全衛生規則第52条の19 |
| 労基署報告 | 1年以内ごとに1回(50人以上) | 労働安全衛生規則第52条の21 |
高ストレス者とは何か?判定基準は?
高ストレス者とは、ストレスチェックで心理的負担が高いと判定された労働者です。
判定基準(厚労省設定例・素点換算表法)
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 条件1 | 心身のストレス反応(6尺度)合計が12点以下 |
| 条件2 | 心身のストレス反応(6尺度)合計が17点以下、かつストレス要因+サポート(12尺度)合計が26点以下 |
素点換算表法では点数が低いほど高ストレス。条件1は心身の反応が著しく高い場合、条件2はストレス要因が高く周囲のサポートも得られていない場合に該当します。
高ストレス者の割合は?
厚労省の設定例では、高ストレス者の割合が概ね10%程度となるよう閾値が調整されています。ただし業種や職場環境によって5〜20%程度まで異なります。
詳しくは「57項目版の採点方法と計算式」をご覧ください。
対応の5ステップ—具体的に何をする?
ステップ1: 結果通知と面接指導の案内—何を伝える?
高ストレス者と判定された従業員には、以下を通知します。
- ストレスチェックの結果(本人のみに通知)
- 医師による面接指導を受けられること
- 面接指導の申出方法
- 面接指導を受けることによる不利益取扱いは禁止されていること
情報管理の注意点: 以下の情報は本人の同意がない限り事業者に通知されません。
- ストレスチェックの結果(評価点・プロファイル)
- 高ストレス者であるかどうか
- 面接指導の内容・結果
ステップ2: 面接指導の申出受付—どう受け付ける?
高ストレス者から面接指導の申出があった場合、事業者は1ヶ月以内に医師による面接指導を実施しなければなりません。
申出受付方法の例
- 専用の申出フォーム
- 人事部門への直接連絡
- 産業医への直接連絡
- ストレスチェックシステム経由
ステップ3: 医師による面接指導の実施—何を確認する?
面接指導は、産業医または事業者が指定する医師が実施します。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 勤務状況 | 労働時間、業務内容、職場環境 |
| 心理的負担の状況 | ストレスの原因、心身の症状 |
| 心身の状況 | 既往歴、生活習慣、睡眠状況 |
| その他 | 家庭環境、本人の希望 |
ステップ4: 医師からの意見聴取—どんな意見が出る?
面接指導を実施した医師から、1ヶ月以内に意見を聴取します。
就業区分
- 通常勤務
- 就業制限(労働時間の短縮、作業の転換など)
- 要休業
労働時間の短縮措置
- 時間外労働の制限
- 労働時間の短縮
- 就業時間帯の変更
- 夜勤回数の削減
その他の措置
- 作業の転換
- 就業場所の変更
- 就業上の配慮
ステップ5: 事後措置の実施—何をする?
医師の意見を踏まえ、必要に応じて以下の措置を講じます。
- 就業上の措置: 労働時間の短縮、配置転換など
- 職場環境の改善: 業務量の調整、人間関係の改善支援
- メンタルヘルスケア: 相談窓口の紹介、EAPの活用
- 経過観察: 定期的なフォローアップ面談
面接指導を拒否された場合の対応—何ができるか?
面接指導の申出は労働者の任意であり、事業者が強制することはできません。
しかし、高ストレス者を放置することは、安全配慮義務の観点からリスクがあります。
申出を促す取り組み
| 取り組み | 内容 |
|---|---|
| 丁寧な説明 | 面接指導の目的、メリット、秘密保持について説明 |
| 申出しやすい環境 | オンライン面談の導入、時間帯の柔軟化 |
| 代替手段の提供 | 外部EAP、社内相談窓口の案内 |
| 実施者からの再勧奨 | 産業医等の実施者から直接面談の勧めを行う |
再勧奨は実施者(産業医等)から行うのが効果的。人事担当者よりも秘密保持への信頼感が高く、申出につながりやすい傾向があります。
面接指導以外の支援への接続
| 支援手段 | 内容 |
|---|---|
| 外部EAP | 社外の専門家による無料相談(電話・対面) |
| 社内相談窓口 | 人事・総務または専任のメンタルヘルス担当者 |
| 地域産業保健センター | 50人未満の事業場向け無料相談 |
| 医療機関への受診 | 本人希望に応じた外部医療機関の紹介 |
拒否された場合の記録—何を残す?
面接指導を勧奨したが受けなかった場合は、以下を記録として残しておきます。
- 面接指導の案内日時と方法
- 実施者からの再勧奨実施日時
- 本人の意思確認日時と回答内容
- 代替手段(EAP等)の案内内容
- フォローアップの実施記録
これらの記録は、万が一労災等が発生した場合に、事業者が安全配慮義務を果たしていたことを示す証拠となります。
職場環境改善のポイント—個別対応だけでは不十分
高ストレス者への個別対応だけでなく、職場全体のストレス要因を改善することが重要です。
集団分析の活用—何が分かる?
ストレスチェックの集団分析結果を活用し、部署・職種ごとのストレス要因を特定します。
仕事のストレス判定図の4象限
| 象限 | 状態 | 対策 |
|---|---|---|
| 高仕事量×低裁量 | 高ストレス職場 | 業務量の削減、権限委譲 |
| 高仕事量×高裁量 | 活動的職場 | サポート体制の強化 |
| 低仕事量×低裁量 | 受動的職場 | 仕事の意義の明確化 |
| 低仕事量×高裁量 | 低ストレス職場 | 現状維持 |
改善アクションの例
| 要因 | 改善アクション |
|---|---|
| 業務量過多 | 業務の棚卸し、優先順位の明確化、人員配置の見直し |
| 長時間労働 | ノー残業デーの設定、業務効率化、管理職の意識改革 |
| 人間関係 | 1on1ミーティングの導入、チームビルディング研修 |
| サポート不足 | メンター制度の導入、相談しやすい雰囲気づくり |
| 役割不明確 | 職務記述書の整備、期待役割の明確化 |
改善を推進する体制—誰が主導する?
衛生委員会での審議
集団分析の結果は、衛生委員会(または安全衛生委員会)で審議します。
- 全社・部署別のストレス状況の共有(個人が特定されない形で)
- 優先的に改善すべき部署・課題の特定
- 改善施策の立案と担当者の決定
- 改善効果の検証スケジュール
管理職へのフィードバック
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 個人の特定禁止 | 10人未満の部署は結果を開示しない、または複数部署を統合 |
| 改善の責任明確化 | 管理職が主体的に改善に取り組む姿勢を促す |
| 教育の実施 | ラインケア研修などで管理職のスキルを向上 |
| 定期的なフォロー | 改善状況を定期的に確認し、支援を行う |
例外・特殊ケース
休職に至った場合の対応は?
高ストレス者が休職に至った場合は、以下の対応を行います。
- 休職中の連絡体制の確認
- 傷病手当金等の手続き案内
- 復職プログラムの準備
- 主治医・産業医との連携
- 職場復帰支援プランの作成
高ストレス者が多い部署への対応は?
集団分析の結果、特定の部署で高ストレス者の割合が高い場合:
- 部署の管理職へのヒアリング
- 業務量・人員配置の見直し
- 職場環境改善ワークショップの実施
- 外部専門家によるコンサルティング
50人未満の事業場の場合は?
50人未満の事業場はストレスチェック実施が努力義務ですが、高ストレス者が出た場合の対応は同様です。地域産業保健センターで無料相談が受けられます。
法的義務と罰則—何が禁止されているか?
事業者の義務
| 義務 | 内容 | 根拠法令 |
|---|---|---|
| 面接指導の実施 | 申出があった場合は1ヶ月以内に実施 | 労働安全衛生法第66条の10 |
| 医師からの意見聴取 | 面接指導後1ヶ月以内 | 労働安全衛生規則第52条の18 |
| 事後措置の実施 | 医師の意見を勘案し必要な措置を講じる | 労働安全衛生法第66条の10 |
| 記録の保存 | 面接指導結果を5年間保存 | 労働安全衛生規則第52条の19 |
| 労基署報告 | 1年以内ごとに1回(50人以上) | 労働安全衛生規則第52条の21 |
禁止される不利益取扱い
以下の行為は法律で禁止されています。
- ストレスチェックを受けないことを理由とした不利益取扱い
- ストレスチェックの結果を理由とした不利益取扱い
- 面接指導の申出を理由とした不利益取扱い
- 面接指導の結果を理由とした不利益取扱い
不利益取扱いの例:解雇、雇い止め、退職勧奨、不当な配置転換、降格、減給など
高ストレス者であることを理由に不利益な取扱いを行った場合、民事上の損害賠償責任を負う可能性があります。また、安全配慮義務違反として労災認定される可能性もあります。
ミニ用語集
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 高ストレス者 | ストレスチェックで心理的負担が高いと判定された労働者 |
| 面接指導 | 高ストレス者が希望した場合に医師が行う面談 |
| 実施者 | ストレスチェックを実施する医師・保健師等 |
| 実施事務従事者 | 調査票の配布・回収等の事務を行う者(人事権を持たない者に限る) |
| EAP | Employee Assistance Program(従業員支援プログラム)。外部専門家による相談サービス |
| 安全配慮義務 | 事業者が従業員の安全と健康を確保するために負う義務 |
| 不利益取扱い | 解雇、降格、減給など、労働者に不利益となる人事上の取扱い |
まとめ—高ストレス者対応のポイント
押さえるべきポイント
- 面接指導の申出があれば1ヶ月以内に実施
- 医師の意見を踏まえた事後措置を講じる
- 不利益取扱いは絶対に行わない
- 記録は5年間保存
- 拒否されても再勧奨と代替手段案内、記録を残す
- 個別対応と職場環境改善の両輪で取り組む
高ストレス者への対応は、専門的な知識と適切な体制が必要です。産業医や外部の専門家と連携しながら、組織全体でメンタルヘルスケアに取り組むことが重要です。
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MentalMapは、高ストレス者の判定から面接指導の管理、集団分析まで一貫してサポートします。高ストレス者への面談希望の管理や、職場環境改善に役立つ分析レポートを提供しています。
参考文献・出典
よくある質問
A. 本人の同意がない限り事業者には通知されません。知ることができるのは実施者(産業医等)と実施事務従事者のみです。面接指導の申出があった時点で事業者に分かります。
A. 集団分析結果をもとに、管理職へのヒアリング、業務量・人員配置の見直し、職場環境改善ワークショップの実施、外部専門家によるコンサルティングなどを検討します。
A. 労働安全衛生規則により5年間の保存が義務付けられています。アクセス制限をかけ、実施者と実施事務従事者のみがアクセスできる形で保管します。
A. 強制はできませんが、実施者(産業医等)からの再勧奨が効果的です。また、外部EAPや社内相談窓口など代替手段を案内し、勧奨した記録は必ず残しておきます。
A. 高ストレス者からの申出があった場合、事業者は概ね1ヶ月以内に医師による面接指導を実施しなければなりません。申出期限は結果通知後1ヶ月以内です。
A. 常時50人以上の労働者を使用する事業場は、1年以内ごとに1回「様式第6号の2」で労働基準監督署へ報告する義務があります。e-Gov電子申請または持参・郵送で提出します。
A. 厚労省の設定例では、素点換算表を用いて(1)心身のストレス反応6尺度合計が12点以下、または(2)同6尺度合計が17点以下かつストレス要因+サポート12尺度合計が26点以下、のいずれかに該当する場合です。