本文へスキップ
実施手順・運用|

メンタルヘルス不調の早期発見と対応|管理職が知るべき部下のサイン

管理職向けに部下のメンタルヘルス不調の早期発見方法を解説。「いつもと違う」サインの具体例、声かけのフレーズ、産業医への橋渡し方法まで。厚労省指針に基づくラインケアの実践ガイド。

メンタルヘルス不調の早期発見と対応|管理職が知るべき部下のサイン

この記事のまとめ

結論(2行で分かる)​ 部下のメンタルヘルス不調を早期発見するカギは「いつもと違う」変化への気付き。遅刻・欠勤の増加、ミスの多発、表情の変化など日常の行動パターンからズレた兆候を見逃さず、声かけと専門家への橋渡しを行うのが管理職の役割。

この記事の対象読者

  • 部下のメンタルヘルスケアに取り組みたい管理職・チームリーダー
  • ラインケア研修を検討している人事・総務担当者
  • 職場のメンタルヘルス対策を強化したい経営者

ポイント(ラインケア3つの柱)​

  1. 気付く: 日頃から部下の行動パターンを把握し「いつもと違う」変化を早期に発見
  2. 声をかける: プライバシーに配慮しながら傾聴の姿勢で話を聴く
  3. つなぐ: 産業医・保健師・EAP等の専門家に橋渡しする

よくある誤解3つ

  • 誤解1: 管理職が診断・治療を行う → 実際は専門家につなぐ役割
  • 誤解2: 本人が相談してくるまで待つ → 実際は管理職から声かけが重要
  • 誤解3: メンタルヘルス対策は人事の仕事 → 実際はラインケアが最前線

根拠: 厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」、こころの耳「15分でわかるラインによるケア」

2025年法改正: 労働安全衛生法の改正により、ストレスチェック義務が50人未満の事業場にも拡大予定(2028年5月までに施行)

管理職が知るべき「早期発見」の重要性

精神障害の労災認定が過去最多を更新

厚生労働省の「令和6年度 過労死等の労災補償状況」によると、精神障害による労災認定件数は1,055件と、統計開始以来初めて1,000件を超えました。6年連続で増加しており、職場のメンタルヘルス対策は喫緊の課題です。

年度精神障害の労災認定件数
令和4年度710件
令和5年度883件
令和6年度1,055件​(過去最多)

認定原因のトップは「上司等からのパワーハラスメント」(224件)であり、管理職の部下への関わり方が労働者のメンタルヘルスに大きな影響を与えることが示されています。

早期発見・早期対応で予後が改善する

学術研究によると、精神疾患の未治療期間(発症から治療開始までの期間)が長いほど予後が悪化することが報告されています。日本における精神病未治療期間は平均17ヶ月にも及ぶとの調査結果もあり、職場での早期発見が重要な役割を果たします。

厚生労働省の報告では、ストレスチェックの集団分析に基づく職場環境改善を行った事業場でメンタルヘルス不調者が5分の1に減少した事例があります。早期発見と予防的対応の効果は実証されています。


「いつもと違う」部下のサイン早見表

気付くべき変化のチェックリスト

厚生労働省「こころの耳」では、ラインケアの最も重要なポイントとして「いつもと違う」部下に早く気付くことを挙げています。以下は管理職が注視すべきサインの一覧です。

カテゴリ具体的なサイン
勤怠の変化遅刻・早退が増える、欠勤が増える、無断欠勤がある
業務パフォーマンスミスが増える、仕事の効率が落ちる、報告・連絡が遅れる
態度・表情元気がない、口数が減る、イライラしている、ぼんやりしている
身体面顔色が悪い、急激な体重変化、疲れた様子が続く
対人関係周囲との会話が減る、孤立しがち、反応が鈍くなる

「いつもと違う」とは何か?

「いつもと違う」という感覚は、部下がそれまでに示してきた行動パターンからズレた行動をすることで生じます。

早期発見の前提: 日頃から部下の行動様式や人間関係の持ち方について把握しておくことが必要です。普段の様子を知らなければ、変化に気付くことはできません。

具体例:

  • それまで遅刻をしたことがなかった部下が遅刻を繰り返すようになった
  • 普段は明るく元気な部下が暗い表情になった
  • 几帳面だった部下が単純なミスを連発するようになった
  • 積極的に発言していた部下が会議で無言になった

ラインケアの実践方法

ラインケアとは?

厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、職場のメンタルヘルス対策として「4つのケア」を示しています。ラインケアはその中核を担うもので、管理監督者が日頃の職場環境の把握と改善、部下の相談対応を行うことを指します。

4つのケア主体主な役割
セルフケア労働者自身ストレスへの気付き、予防対処
ラインケア管理監督者職場環境改善、部下の変化への気付き、相談対応
事業場内スタッフによるケア産業医・保健師等専門的支援、計画策定
事業場外資源によるケア外部専門機関専門的サービス提供

管理職の役割: 3つのステップ

管理監督者は部下を管理監督する権限を委譲されていることから、​安全配慮義務の実行責任を負っています(労働契約法第5条)。ただし、管理職は診断や治療を行う立場ではありません。役割は以下の3つに集約されます。

Step 1: 気付く

  • 日頃から部下の行動パターンを把握する
  • 「いつもと違う」変化に注意を払う
  • 長時間労働や強いストレス要因がないか確認する

Step 2: 声をかける

  • プライバシーに配慮した場所で話を聴く
  • 傾聴の姿勢で、相手の気持ちに寄り添う
  • アドバイスや説教をせず、まず聴くことに徹する

Step 3: つなぐ

  • 必要に応じて産業医・保健師等の専門家に橋渡しする
  • 本人が相談に抵抗を示す場合は、管理職自身が専門家に相談する
  • 外部EAPや相談窓口の情報を提供する

注意: 管理職は診断や治療を行う立場ではありません。「病気かどうか」の判断は産業医等の専門家の役割です。変化に気付いたら、専門家につなぐことが重要です。


声かけの具体例

傾聴のポイント

厚生労働省「こころの耳」によると、傾聴とは「この人は今どんな気持ちでこの話をしているのだろう」ということに関心を持ちながら積極的な姿勢で話を聴くことです。

避けるべき対応:

  • 部下の話を途中で遮ってアドバイスや説教をする
  • 電話や来客対応で話を中断させる
  • 周囲に話が聞こえる場所で対応する

心がけるべきこと:

  • 表情や視線、姿勢で「聴いている」ことを示す
  • 相手の言葉を繰り返す(オウム返し)
  • 沈黙を恐れず、相手のペースを尊重する

声かけの具体的なフレーズ

場面声かけ例
変化に気付いた時「最近少し疲れているように見えるけど、大丈夫?」
話を聴く姿勢を示す「何かあったら、いつでも話を聞くよ」
相談を促す「一人で抱え込まないで、相談してくれていいからね」
専門家への橋渡し「一度、産業医の先生に相談してみない?私も一緒に行こうか?」
本人が拒否した場合「それなら、あなたの代わりに私が相談に行ってくるよ」

産業医への相談を勧める際の工夫

産業医等への相談を勧めても、「人に悩みを相談することに抵抗がある」「周囲から変な目で見られるかもしれない」といった考えから心理的な抵抗を示す部下もいます。

本人が抵抗を示す場合は無理強いしないことが重要です。「それならいいけど、あなたの代わりに私が相談に行ってくるよ」と伝え、管理監督者自身が産業医等に相談してアドバイスを得る方法も有効です。


職場環境改善の視点

ストレス要因を減らす取り組み

ラインケアは「部下への対応」だけでなく、​職場環境そのものの改善も含みます。

ストレス要因改善アクション例
業務量過多業務の棚卸し、優先順位の明確化、人員配置の見直し
長時間労働ノー残業デーの設定、業務効率化、管理職の意識改革
裁量不足権限委譲、意思決定への参加機会の提供
人間関係1on1ミーティングの導入、チームビルディング
サポート不足メンター制度、相談しやすい雰囲気づくり

ストレスチェックの集団分析を活用する

ストレスチェックの集団分析結果を活用することで、部署ごとのストレス状況を客観的に把握できます。「仕事のストレス判定図」を用いて、仕事の量・コントロール・サポートのバランスを分析し、優先的に改善すべき課題を特定しましょう。

2025年法改正: 2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、これまで努力義務だった50人未満の事業場でもストレスチェックが義務化されます(2028年5月までに施行予定)。中小企業も早めの準備が推奨されます。


管理職自身のセルフケアも重要

「部下のケアをするためには、上司自身のゆとりも大切」

厚生労働省「こころの耳」では、管理職自身のメンタルヘルスケアの重要性も指摘されています。部下のケアに追われるあまり、自分自身が燃え尽きてしまっては本末転倒です。

管理職自身のセルフケア:

  • 自分のストレスサインを知る
  • 相談できる相手(上司、同僚、産業医等)を持つ
  • 適切な休息とリフレッシュを心がける
  • 完璧を目指さず、専門家に頼ることを恐れない

関連記事


ミニ用語集

用語意味
ラインケア管理監督者が職場環境改善と部下の相談対応を行うこと
4つのケア厚労省指針に基づくメンタルヘルス対策の基本的枠組み
安全配慮義務労働契約法第5条に基づき、事業者が従業員の生命・身体・心身の健康を確保するために負う義務
傾聴相手の気持ちに関心を持ちながら積極的に話を聴くこと
産業医事業場で労働者の健康管理を行う医師
EAPEmployee Assistance Program(従業員支援プログラム)

MentalMapでラインケアを支援

MentalMapは、管理職のラインケアを効果的に支援するストレスチェックサービスです。

詳細な状態把握

  • 80項目版で「ハラスメント」「ワークエンゲージメント」など詳細な分析が可能
  • 部署別・属性別の集団分析レポート
  • 経年比較で改善効果を可視化

高い回答率の実現

  • 受検案内・リマインドメールの自動送信(終了1週間前・終了前日の2回)
  • スマートフォン対応で、いつでもどこでも回答可能
  • 回答状況のリアルタイム確認

多言語対応

  • 12カ国語に対応(追加料金なし)
  • 外国人従業員のメンタルヘルスケアも万全

運用負荷軽減

  • 労基署報告書(様式第6号の2)の自動出力
  • 実施者・事務従事者の権限分離
  • 高ストレス者の自動判定

よくある質問

A. 遅刻・欠勤の増加、ミスの多発、表情の変化(元気がない、暗い)、口数の減少、対人関係の変化などが代表的なサインです。「いつもと違う」変化に注目することが早期発見のポイントです。

A. プライバシーに配慮した場所で、傾聴の姿勢で話を聴くことが基本です。「最近少し疲れているように見えるけど、大丈夫?」など、押し付けがましくならない声かけから始めましょう。

A. 無理強いはせず、「あなたの代わりに私が相談に行ってくるよ」と伝え、管理職自身が産業医等に相談してアドバイスを得る方法が有効です。

A. いいえ。管理職は診断や治療を行う立場ではありません。病気の有無の判断は産業医等の専門家の役割です。管理職の役割は変化に気付き、専門家につなぐことです。

A. 厚生労働省指針に基づく4つのケアの一つで、管理監督者が日頃の職場環境の把握と改善、部下の相談対応を行うことを指します。部下の「いつもと違う」変化に気付き、対応することが中心的な役割です。

A. 管理監督者は事業主から権限を委譲されていることから、安全配慮義務の実行責任を負っています。部下のメンタルヘルス不調に気付きながら放置した場合、安全配慮義務違反を問われるリスクがあります。

関連記事

ストレスチェックの導入をご検討中ですか?

MentalMapは、厚生労働省基準に完全準拠したストレスチェック管理システムです。 まずは無料でお試しください。