過重労働対策とストレスチェックの連携|長時間労働者への面接指導
過重労働対策とストレスチェック制度の連携を解説。月80時間超の長時間労働者への面接指導義務、36協定の上限規制、両制度の効果的な連携運用のポイントまで。厚生労働省の総合対策に基づく健康障害防止の実践方法を紹介。

結論(2行で分かる) 過重労働対策とストレスチェック制度は、いずれも従業員の健康障害防止を目的とし、月80時間超の長時間労働者・高ストレス者への医師面接指導で連携する。36協定の適正化と労働時間管理がメンタルヘルス対策の基盤となる。
この記事の対象読者
- 過重労働対策とストレスチェックを一体的に運用したい人事・総務担当者
- 長時間労働者への面接指導義務を理解したい衛生管理者
- 36協定の見直しと健康管理を両立させたい事業場
ポイント(5つ)
- 月80時間超の時間外・休日労働者には医師面接指導が義務(申出があった場合)
- 月100時間超の場合は申出なしで面接指導義務(研究開発業務等)
- ストレスチェックの高ストレス者と長時間労働者は重複することが多い
- 36協定の上限規制(月45時間・年360時間、特別条項でも月100時間未満)
- 両制度の連携運用で効果的な健康障害防止が実現
よくある誤解3つ
- 誤解1: 過重労働対策とストレスチェックは別々の制度 → 実際は連携して運用すべき
- 誤解2: 月80時間超なら自動的に面接指導が必要 → 実際は本人の申出が要件(一般労働者)
- 誤解3: 36協定を締結すれば時間外労働は制限なし → 実際は罰則付き上限規制あり
根拠: 労働安全衛生法第66条の8・第66条の10、労働基準法第36条、厚生労働省「過重労働による健康障害防止のための総合対策」
早見表:過重労働対策とストレスチェックの関係
| 項目 | 過重労働対策 | ストレスチェック |
|---|---|---|
| 根拠法令 | 労働安全衛生法第66条の8 | 労働安全衛生法第66条の10 |
| 目的 | 脳・心臓疾患の防止 | メンタルヘルス不調の未然防止 |
| 対象者 | 長時間労働者 | 高ストレス者 |
| 面接指導基準 | 月80時間超(申出)・月100時間超(義務) | 高ストレス者で申出があった場合 |
| 記録保存 | 5年間 | 5年間 |
| 共通点 | 医師による面接指導、事後措置、不利益取扱い禁止 |
過重労働による健康障害とは?
過重労働がもたらすリスク
過重労働とは、長時間にわたる労働により心身に過度の負担がかかる状態を指す。厚生労働省によると、時間外・休日労働時間が月80時間を超えると、脳・心臓疾患の発症リスクが高まるとされている。
過重労働と健康障害の関連
| 時間外・休日労働時間 | 健康リスク |
|---|---|
| 月45時間以内 | 業務と発症の関連性は弱い |
| 月45時間超〜80時間 | 業務と発症の関連性が徐々に強まる |
| 月80時間超 | 業務と発症の関連性が強い |
| 月100時間超 | 業務と発症の関連性が極めて強い |
1週間あたり40時間を超える労働時間が月100時間または2〜6か月平均で80時間を超える場合、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いとされている(過労死ライン)。
過重労働対策の基本方針
厚生労働省は「過重労働による健康障害防止のための総合対策」を策定し、以下の取り組みを推進している。
- 時間外・休日労働時間の削減
- 年次有給休暇の取得促進
- 健康管理体制の整備
- 健康診断の実施
- 長時間労働者への医師面接指導
長時間労働者への面接指導義務とは?
面接指導の対象者
労働安全衛生法では、長時間労働者に対する医師の面接指導が規定されている。2019年4月の法改正により、対象者と実施義務が明確化された。
対象者と義務レベル
| 対象者 | 要件 | 義務レベル |
|---|---|---|
| 一般労働者 | 月80時間超の時間外・休日労働+疲労の蓄積+本人の申出 | 実施義務 |
| 一般労働者 | 月80時間超(申出なし) | 努力義務 |
| 研究開発業務従事者 | 月100時間超の時間外・休日労働 | 実施義務(申出不要) |
| 高度プロフェッショナル制度適用者 | 月100時間超の健康管理時間 | 実施義務(申出不要) |
| 医師 | 月100時間超の時間外労働(見込み) | 実施義務(2024年4月〜) |
月80時間は「1日あたり4時間程度の残業」に相当する。事業者は、月80時間を超える労働者に対して、速やかに労働時間に関する情報を本人に通知しなければならない。
面接指導の流れ
- 労働時間の把握: 事業者は労働者の労働時間を適正に把握
- 情報通知: 月80時間超の労働者に労働時間情報を通知
- 申出の受付: 労働者が面接指導を希望する旨を申出
- 面接指導の実施: 医師による面接指導(申出後おおむね1か月以内)
- 意見聴取: 医師から就業上の措置に関する意見を聴取
- 事後措置: 必要に応じて就業上の措置を実施
産業医への情報提供義務
事業者は、時間外・休日労働時間が月80時間を超える労働者の情報を産業医に提供しなければならない(労働安全衛生規則第52条の2第3項)。
提供すべき情報
- 労働時間
- 作業環境、作業負荷の状況
- 深夜業の回数および時間数
36協定と時間外労働の上限規制とは?
36協定とは
36協定(サブロク協定)とは、労働基準法第36条に基づき、法定労働時間を超えて労働させる場合に、使用者と労働者の過半数を代表する者との間で締結する労使協定のこと。
時間外労働の上限規制(2019年4月施行)
| 区分 | 上限時間 |
|---|---|
| 原則 | 月45時間・年360時間 |
| 特別条項(臨時的な特別の事情がある場合) | 年720時間以内 |
| 時間外+休日労働 | 月100時間未満 |
| 時間外+休日労働(2〜6か月平均) | 月80時間以内 |
| 月45時間超が許容される回数 | 年6回まで |
罰則あり: 上限規制に違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される。特別条項の有無にかかわらず、月100時間以上または2〜6か月平均80時間超は違法となる。
適用猶予・除外業種
| 業種 | 2024年4月以降の取り扱い |
|---|---|
| 建設業 | 上限規制適用(災害復旧は一部除外) |
| 自動車運転業務 | 年960時間上限(月単位規制は対象外) |
| 医師 | 別途規制あり(A水準等) |
| 鹿児島・沖縄の砂糖製造業 | 上限規制適用 |
ストレスチェックと過重労働対策をどう連携する?
両制度の共通点
過重労働対策とストレスチェック制度は、いずれも従業員の健康障害を防止することを目的としている。特に面接指導の仕組みにおいて多くの共通点がある。
共通する仕組み
| 項目 | 長時間労働者 | 高ストレス者 |
|---|---|---|
| 面接指導実施者 | 医師 | 医師 |
| 面接指導期限 | 申出後おおむね1か月以内 | 申出後おおむね1か月以内 |
| 意見聴取期限 | 面接後おおむね1か月以内 | 面接後おおむね1か月以内 |
| 記録保存期間 | 5年間 | 5年間 |
| 不利益取扱い | 禁止 | 禁止 |
長時間労働と高ストレスの関連
長時間労働者と高ストレス者は重複することが多い。ストレスチェックの「仕事のストレス要因」には「仕事の量」「仕事のコントロール」といった項目が含まれており、過重労働の状況が反映されやすい。
連携のメリット
- 両制度の面接指導を一体的に運用することで効率化
- 長時間労働とストレス反応の両面から健康リスクを把握
- 集団分析で部署ごとの労働時間とストレス状況を可視化
- 職場環境改善と働き方改革を同時に推進
効果的な連携運用のポイント
- 産業医の活用: 長時間労働者と高ストレス者の両方の面接指導を担当
- 情報の一元管理: 労働時間データとストレスチェック結果を統合的に管理
- 衛生委員会での審議: 過重労働対策とストレスチェック結果を合わせて議論
- 集団分析の活用: 残業時間の多い部署と高ストレス部署の相関を分析
- 職場環境改善: 労働時間削減とストレス要因軽減を同時に推進
長時間労働者への面接指導とストレスチェック後の面接指導を別々に実施するのではなく、同一の機会に両方の観点から面談を行うことで、効率的かつ効果的な健康管理が可能になる。
事業者が講じるべき措置とは?
過重労働防止のための措置
| 措置 | 内容 |
|---|---|
| 労働時間の適正把握 | 客観的な方法(タイムカード、ICカード等)で把握 |
| 36協定の適正化 | 上限規制を遵守した協定の締結 |
| 時間外労働の削減 | 業務の効率化、人員配置の見直し |
| 年次有給休暇の取得促進 | 計画的付与、取得しやすい環境づくり |
| 面接指導の実施 | 対象者への面接指導と事後措置 |
ストレスチェックとの統合的な対策
| 対策 | 過重労働 | ストレスチェック |
|---|---|---|
| 労働時間の把握 | 必須 | 推奨(集団分析に活用) |
| 面接指導 | 月80時間超+申出 | 高ストレス者+申出 |
| 集団分析 | 部署別残業時間 | 仕事のストレス判定図 |
| 職場環境改善 | 業務量の調整 | ストレス要因の軽減 |
| 衛生委員会での審議 | 過重労働防止計画 | 集団分析結果と改善策 |
50人未満の事業場ではどう対応する?
ストレスチェックの義務化
2025年5月の労働安全衛生法改正により、従業員50人未満の事業場でもストレスチェックの実施が義務化された。施行日は公布から3年以内に政令で定められる。
地域産業保健センターの活用
50人未満の事業場で産業医の選任義務がない場合でも、長時間労働者や高ストレス者への面接指導は必要。地域産業保健センター(地産保)を活用することで、無料で面接指導を受けられる。
地域産業保健センターで受けられるサービス
- 長時間労働者への医師面接指導
- 高ストレス者への医師面接指導
- 健康相談
- 職場環境改善の助言
地域産業保健センターは全国約350か所(おおむね労働基準監督署単位)に設置されており、50人未満の事業場向けに無料で産業保健サービスを提供している。
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- ストレスチェック集団分析の活用|職場環境改善の進め方5ステップ
ミニ用語集
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 過重労働 | 長時間にわたる労働により心身に過度の負担がかかる状態 |
| 36協定 | 労働基準法第36条に基づく時間外・休日労働に関する労使協定 |
| 上限規制 | 時間外労働の上限を法律で規定し、罰則付きで規制すること |
| 過労死ライン | 月80時間超の時間外労働が脳・心臓疾患の発症リスクを高めるとされる基準 |
| 高度プロフェッショナル制度 | 高度な専門知識を持つ労働者に対し、労働時間規制を適用しない制度 |
| 地域産業保健センター | 50人未満の事業場向けに無料で産業保健サービスを提供する機関 |
MentalMapで過重労働対策とストレスチェックを連携
MentalMapは、過重労働対策とストレスチェックの連携運用をサポートします。
面接指導サポート
- 高ストレス者への面接指導の管理
- 面接指導結果報告書の作成・保存
- 就業上の措置の記録
集団分析と職場環境改善
- 仕事のストレス判定図による部署分析
- 改善施策の効果検証
- 労基署報告用データの出力
50人未満でも導入しやすい
- 基本料金0円、500円/回答
- 最低課金人数なし
- 12言語対応(追加料金なし)
参考文献・出典
よくある質問
A. 一般労働者の場合、月80時間超の時間外・休日労働があり、疲労の蓄積が認められ、本人が申出をした場合に面接指導の実施義務が発生します。申出がない場合は努力義務となります。ただし、研究開発業務従事者や高度プロフェッショナル制度適用者は、月100時間超で申出なしでも義務となります。
A. 産業医が両方の面接指導を担当し、労働時間データとストレスチェック結果を統合的に管理することで効率的に連携できます。衛生委員会で過重労働対策とストレスチェック結果を合わせて審議し、職場環境改善を同時に推進することが効果的です。
A. 時間外労働が月100時間以上または2〜6か月平均80時間超となった場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。特別条項の有無にかかわらず、この上限規制は適用されます。
A. はい、事業場規模に関わらず面接指導の実施義務は適用されます。産業医の選任義務がない場合は、地域産業保健センターを活用することで、無料で医師による面接指導を受けることができます。
A. 同一の機会に両方の観点から面談を行うことで、1回の面接指導で対応することが可能です。産業医が長時間労働とストレス状況の両面から評価し、総合的な就業上の措置を検討することが効果的です。

