金融・保険業界のストレスチェック活用事例|高プレッシャー環境での職場改善
金融・保険業界のストレスチェック活用事例を紹介。実施率96.7%と業界トップながら、メンタルヘルス不調による休業率も高い金融業界特有の課題と対策を、厚生労働省データと実例を基に解説。

結論(2行で分かる) 金融・保険業界はストレスチェック実施率が96.7%と全業種で最も高い一方、メンタルヘルス不調による休業・退職者がいる事業所の割合も22.3%と高水準。業界特有の「心理的な仕事の負担(質)」への対策として、集団分析の活用と職場環境改善が成果につながっている。
この記事の対象読者
- 金融機関・保険会社の人事・総務・健康管理担当者
- 信用金庫・地方銀行でストレスチェックを効果的に活用したい担当者
- 高ストレス者率の改善や職場環境改善に取り組みたい衛生管理者
ポイント(3つの特徴)
- 金融・保険業界はストレスチェック実施率96.7%で全業種トップだが、活用面に課題あり
- 業界特有のストレス要因は「情報の取扱い」「ノルマプレッシャー」「顧客対応」
- 集団分析を活用した職場環境改善でメンタルヘルス不調者を大幅に減少させた事例あり
よくある誤解3つ
- 誤解1: 実施率が高いから対策は十分 → 実際は集団分析の活用・職場改善まで進めてこそ効果がある
- 誤解2: 高ストレス者への面談だけで十分 → 実際は一次予防としての職場環境改善が重要
- 誤解3: 金融業界は他業種より安定している → 実際はメンタルヘルス不調による休業率は全業種4位と高水準
根拠: 厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査)」、こころの耳「職場のメンタルヘルス対策の取組事例」
金融・保険業界のメンタルヘルス現状|統計データで見る実態
ストレスチェック実施率は全業種トップ
厚生労働省「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、金融業・保険業のストレスチェック実施率は96.7%で全業種で最も高い水準です。
| 業種 | ストレスチェック実施率 |
|---|---|
| 金融業・保険業 | 96.7%(1位) |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 高水準 |
| 情報通信業 | 高水準 |
| 全業種平均 | 84.7% |
| 宿泊業・飲食サービス業 | 66.2%(最低) |
メンタルヘルス不調による休業・退職者の実態
しかし、メンタルヘルス不調により連続1ヶ月以上休業した労働者または退職した労働者がいた事業所の割合を見ると、金融業・保険業は22.3%で全業種4位と高い水準にあります。
| 順位 | 業種 | 休業・退職者がいた事業所割合 |
|---|---|---|
| 1位 | 情報通信業 | 32.4% |
| 2位 | 学術研究・専門技術サービス業 | 23.4% |
| 3位 | 電気・ガス・熱供給・水道業 | 23.3% |
| 4位 | 金融業・保険業 | 22.3% |
| 5位 | 教育・学習支援業 | 20.8% |
| - | 全産業平均 | 13.3% |
注目すべき傾向: ストレスチェック実施率が最も高い金融・保険業界ですが、メンタルヘルス不調による休業・退職者の割合は全産業平均(13.3%)の約1.7倍。「実施するだけ」では効果が限定的であり、結果を活用した職場環境改善が重要です。
労働者のストレス状況
厚生労働省の調査によると、現在の仕事や職業生活に関することで「強い不安、悩み、ストレスと感じる事柄がある」と回答した労働者の割合は82.7%(令和5年調査)と高水準が続いています。
特に「顧客、取引先等からのクレーム」がストレス要因として挙げられる割合は26.6%で、前回調査から4.7ポイント上昇し、上昇幅が最も大きい項目となっています。顧客対応が業務の中心となる金融・保険業界にとって、この傾向は特に注視すべきポイントです。
金融・保険業界特有のストレス要因
「心理的な仕事の負担(質)」が突出
金融・保険業界では、ストレスチェックの集団分析において「心理的な仕事の負担(質)」の項目が他業種と比較して特に高い傾向があります。
主なストレス要因
| 要因 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 情報の取扱い | 個人情報・機密情報を常に慎重に扱う緊張感 |
| コンプライアンス負担 | 金融規制・内部統制への対応、監査対応 |
| ノルマプレッシャー | 営業目標・業績評価に対するプレッシャー |
| 顧客対応ストレス | クレーム対応、高い顧客期待への対応 |
| 正確性の要求 | 金額計算・書類作成における厳密な正確性 |
| 市場変動への対応 | 金融市場の変動に伴う業務負荷の変化 |
男性従業員に特有の傾向
金融・保険業界の男性従業員においては、心身のストレス反応の中でも「不安」「身体愁訴」を訴える方が多く、これが高ストレス者率の増加に影響しているとされています。
業界特性の理解が重要: 金融・保険業界では、「勤務中ずっと集中力を要する」「不安を感じながら作業する」業務が多く、業務後も緊張状態が取れず、イライラや落ちつかなさが現れることがあります。この業界特性を踏まえた対策が必要です。
事例の匿名化について: 本記事で紹介する事例(A社・B社・C社)は、厚生労働省「こころの耳」に掲載されている実在企業の取組事例をもとに、企業名・所在地等の特定情報を匿名化して再構成しています。取り組み内容や成果は掲載事例に基づいています。
事例1: A社(信用金庫・従業員約1,400名)—独自調査票と全員面談で組織改善
企業概要と取り組み背景
A社は、近畿地方を拠点とする信用金庫です。複数の支店で約1,400名が働く組織で、2019年に産業看護師を2名専任採用し、メンタルヘルス対策を大幅に強化しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 近畿地方 |
| 従業員数 | 約1,400名 |
| 支店数 | 複数 |
| 業種 | 信用金庫(金融業) |
| 関係者 | 産業看護師2名(2019年採用)、人事労務担当者 |
取り組みの特徴
1. 独自の「いきいき職場づくり調査票」を開発
- 既存のメンタルヘルス調査票を自社の業務特性に合わせてカスタマイズ
- 窓口業務・渉外業務・内部管理業務それぞれのストレス要因を的確に把握
2. 高ストレス部署への全従業員個別面談
- 集団分析で高ストレスと判定された部署では、産業看護師が全従業員と個別に面談
- 個別面談後にグループ討議を実施し、部署全体のコミュニケーション課題を特定
3. 産業看護師による継続的な支店訪問
- 産業看護師2名が各支店を定期訪問し、心身の健康・職場環境・人間関係をヒアリング
- 四半期ごとの安全衛生委員会で改善状況を報告し、経営層へのレポーティングを実施
成果
改善施策を実施した全部門において、翌年のストレスチェック集団分析で総合健康リスクが改善。産業看護師の採用と独自調査票の開発により、業界特有のストレス要因を組織的に把握・対処できる体制を構築しました。
参照: こころの耳「職場のメンタルヘルス対策の取組事例」掲載事例をもとに匿名化して作成
事例2: B社(損害保険会社・従業員約300名)—15年以上継続する4本柱のメンタルヘルス体制
企業概要と取り組み背景
B社は、地方都市を拠点とする損害保険会社です。地域の産業保健センターの支援を受けて「こころの健康づくり計画」を策定し、15年以上にわたって体系的なメンタルヘルス対策を継続しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 地方都市 |
| 従業員数 | 約320名 |
| 業種 | 損害保険業 |
| 取り組み開始 | 地域の産業保健センターの支援を受け計画策定 |
| 関係者 | 人事労務担当者、産業医、外部EAP、外部カウンセラー |
取り組みの特徴:4本柱の体制
1. セルフケア研修(新入社員向け)
- 入社6ヶ月研修でストレス対処法・相談窓口の活用法を指導
- 毎年15名以上が受講、10年以上継続して実施
2. ラインケア研修(管理職向け)
- 新任管理職全員に3時間の必須研修を実施
- 部下のメンタルヘルス不調の気づき方・面談スキルを実践的に習得
- 10年以上の継続実施で管理職の対応能力が底上げ
3. 事業場内産業保健スタッフによるケア
- 産業医が月1回の定期面談を実施(積極的な勧奨で利用ハードルを低下)
- 安全衛生委員会で時間外労働を毎月モニタリングし、過重労働を早期把握
4. 外部専門家の活用
- 24時間365日対応のEAP(従業員支援プログラム)電話相談(従業員・家族ともに利用可能)
- 外部産業カウンセラーが月3回来社し、1時間の個別相談を実施
成果
外部カウンセラーが研修講師も兼任することで、従業員が「研修で顔を知っている人」に相談できる環境を実現。「知らない人に相談する」心理的ハードルを下げ、カウンセラー利用率が向上しました。15年以上の継続によって、相談しやすい職場文化が定着しています。
参照: こころの耳「職場のメンタルヘルス対策の取組事例」掲載事例をもとに匿名化して作成
事例3: C社(大手証券会社・従業員9,000名以上)—義務化8年前から実践するストレスチェック活用
企業概要と取り組み背景
C社は、全国に100以上の営業拠点を持つ大手証券会社です。2007年から独自のウェブシステムによるストレスチェックを導入し、2015年の法制度義務化より8年先行してメンタルヘルス対策を実施してきました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都 |
| 従業員数 | 約9,000名 |
| 業種 | 証券業(金融業) |
| 国内拠点数 | 100以上 |
| ストレスチェック開始 | 2007年(義務化の8年前) |
取り組みの特徴
1. ヘルスケアサポーター制度
- JISHA(中央労働災害防止協会)等の認定資格を持つ社員が「ヘルスケアサポーター」として部署内の相談役を担う
- 特に経験年数の少ない社員が「身近な相談相手」に気軽に話せる環境を構築
- 同僚目線の早期気づきで、問題が深刻化する前に専門支援につなぐ
2. 部署単位の継続的モニタリング
- 2007年から部署別データを継続追跡し、経年変化を可視化
- 高ストレスが集中する部署を早期に特定し、組織的な改善につなぐ
3. HR担当者による直接介入型の職場改善
- 高ストレス部署に人事部門の担当者が直接出向き、職場環境改善を主体的にサポート
- 現場管理職だけに任せず、人事部門も一体となって改善PDCAを実行
4. プライバシーを保護した個別面談体制
- 医師による面接指導を上司への通知なしで受けられる体制を整備
- プライバシーへの配慮が従業員の「受けやすさ」につながり、早期相談を促進
成果
法制度義務化以前から積み重ねてきた知見が組織の強みとなり、「メンタルヘルスについて相談できる文化」が定着。特に営業職が中心の組織において、ヘルスケアサポーター制度が早期発見・早期対応の機能を担っています。
参照: こころの耳「職場のメンタルヘルス対策の取組事例」掲載事例をもとに匿名化して作成
金融・保険業界でストレスチェックを効果的に活用するための5つのポイント
ポイント1: 集団分析で「心理的な仕事の負担(質)」を重点確認
金融・保険業界では、集団分析において以下の項目を重点的に確認することが重要です。
重点確認項目
- 心理的な仕事の負担(質):高度な集中力・正確性を要する業務負荷
- 仕事のコントロール:自分で仕事の進め方を決められる度合い
- 上司の支援:困ったときに上司に相談できる環境
- 同僚の支援:チームワーク、相互サポートの状況
ポイント2: 部署別分析で営業・窓口部門を重点把握
顧客対応を担う営業部門・窓口部門は、クレーム対応やノルマプレッシャーにさらされやすいため、重点的な分析と対策が必要です。
ポイント3: コンプライアンス研修とメンタルヘルス研修の連携
金融・保険業界ではコンプライアンス研修が頻繁に実施されますが、これとメンタルヘルス研修を連携させることで効率的な取り組みが可能です。
ポイント4: 産業医・保健師との連携体制構築
大規模金融機関では産業保健スタッフとの連携、中小規模では外部専門家の活用により、専門的なサポート体制を構築することが重要です。
ポイント5: 経営層へのレポーティングと改善PDCAの実行
集団分析結果を経営層に報告し、具体的な改善施策を策定・実行・検証するPDCAサイクルを回すことが成果につながります。
職場環境改善の具体的な施策例
「仕事の量的負担」への対策
| 施策 | 内容 |
|---|---|
| 業務の平準化 | 繁忙期・閑散期の業務量調整、チーム間での負荷分散 |
| ITツール活用 | 定型業務の自動化、事務作業の効率化 |
| 目標設定の見直し | 達成可能な目標設定、個人差を考慮した配分 |
「上司の支援」への対策
| 施策 | 内容 |
|---|---|
| 1on1面談の導入 | 定期的な個別面談で部下の状況を把握 |
| ラインケア研修 | 管理職向けのメンタルヘルス研修実施 |
| 相談窓口の周知 | 社内外の相談窓口を従業員に周知 |
「心理的な仕事の負担(質)」への対策
| 施策 | 内容 |
|---|---|
| ダブルチェック体制 | 重要業務の複数人確認で個人の負担軽減 |
| マニュアル整備 | 業務手順の明確化で判断負荷を軽減 |
| 休憩の確保 | 集中業務後の適切な休憩時間の確保 |
多様な働き方への対応
外国人従業員への対応
金融・保険業界でも外国人従業員が増加しています。MentalMapは12カ国語(日本語・英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語・ベトナム語・タガログ語・ポルトガル語・スペイン語・インドネシア語・タイ語・ミャンマー語・ネパール語)に対応しており、外国人従業員も母国語でストレスチェックを受検できます。
リモートワーク・ハイブリッド勤務への対応
コロナ禍以降、金融・保険業界でもリモートワークやハイブリッド勤務が定着しています。スマートフォン対応のストレスチェックシステムを活用することで、場所を選ばず受検が可能です。
調査票の選択|57項目から141項目まで
金融・保険業界の特性に応じて、適切な調査票を選択することが重要です。
| 調査票 | 特徴 | 金融・保険業界での活用 |
|---|---|---|
| 57項目版 | 厚労省推奨の標準版 | 基本的な実施に最適 |
| 80項目版 | 職場環境改善に特化した項目を追加 | 集団分析・職場改善重視の場合に推奨 |
| 120項目版 | 新職業性ストレス簡易調査票 | 詳細な分析が必要な場合 |
| 141項目版 | 最も詳細な調査票 | 大規模な分析・研究目的 |
推奨: 金融・保険業界では、職場環境改善を重視した80項目版以上の活用がおすすめです。「心理的な仕事の負担(質)」「仕事の意義」「成長の機会」など、業界特有のストレス要因を詳細に把握できます。
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ミニ用語集
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 集団分析 | ストレスチェック結果を部署単位等で集計し、職場ごとのストレス状況を把握すること。努力義務 |
| 総合健康リスク | 量-コントロール判定図と職場の支援判定図から算出。100が全国平均、高いほどリスク大 |
| 高ストレス者 | ストレスチェック結果で一定基準を超え、医師による面接指導が必要と判定された者 |
| 一次予防 | メンタルヘルス不調の未然防止。職場環境改善、ストレスマネジメント等 |
| 二次予防 | メンタルヘルス不調の早期発見・早期対応。面談、相談窓口等 |
| ラインケア | 管理監督者が職場環境の把握と改善、部下の相談対応を行うメンタルヘルス対策 |
MentalMapで金融・保険業界のストレスチェックを効率化
本記事で紹介した金融・保険業界の特性を踏まえた運用を実現するために、MentalMapは以下の機能を提供しています。
12カ国語対応で多様な従業員をカバー
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- 外国人従業員も母国語で正確に回答可能
スマートフォン対応でいつでもどこでも受検
- 営業外出中や在宅勤務中でも受検可能
- 自動リマインドメールで受検率向上をサポート
57/80/120/141項目に対応
- 業界特性に応じた調査票を選択可能
- 詳細な集団分析で「心理的な仕事の負担(質)」を把握
部署別・属性別の集団分析
- 営業部門、窓口部門など部署別の分析
- 全国平均との比較で自社の立ち位置を可視化
- 経年変化を追跡し、改善効果を検証
参考文献・出典
よくある質問
A. 厚生労働省「令和5年労働安全衛生調査」によると、金融業・保険業のストレスチェック実施率は96.7%で、全業種の中で最も高い水準です。ただし、メンタルヘルス不調による休業・退職者がいる事業所の割合も22.3%と高く、実施するだけでなく結果を活用した職場環境改善が重要です。
A. 金融・保険業界では「心理的な仕事の負担(質)」が特に高い傾向があります。具体的には、機密情報・個人情報の取り扱いに伴う緊張感、コンプライアンス対応、営業ノルマへのプレッシャー、顧客対応ストレス、金額計算・書類作成における厳密な正確性の要求などが主なストレス要因です。
A. 厚生労働省の調査では、継続的にストレスチェック制度に取り組み、集団分析結果を活用して職場環境改善を行った結果、メンタルヘルス不調者が5分の1に減少した事業者も報告されています。特に金融・保険業界では、「仕事の量的負担」「上司の支援」「心理的な仕事の負担(質)」に着目した分析と改善が効果的です。
A. はい、実施できます。MentalMapは12カ国語(日本語・英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語・ベトナム語・タガログ語・ポルトガル語・マレー語・インドネシア語・タイ語・ミャンマー語・ネパール語)に対応しており、外国人従業員も母国語でストレスチェックを受検できます。
A. 金融・保険業界では、職場環境改善を重視した80項目版以上の調査票がおすすめです。標準の57項目版でも基本的な分析は可能ですが、80項目版以上では「心理的な仕事の負担(質)」「仕事の意義」「成長の機会」など、業界特有のストレス要因をより詳細に把握できます。