小売・飲食業界のストレスチェック活用事例|シフト勤務・接客業での職場環境改善
小売・飲食業界のストレスチェック活用成功事例を3社紹介。シフト勤務者の受検率向上、カスタマーハラスメント対策との連動、多国籍従業員への多言語対応など、業界特有の課題解決ポイントを解説。

結論(2行で分かる) 小売・飲食・宿泊業界では「シフト勤務者への受検機会の確保」「集団分析を活かした職場改善のPDCA」「パート比率の高い職場での全員参加体制の構築」が成功の鍵。ストレスチェックを「義務だからやる」のではなく、職場改善と従業員定着のツールとして活用することで、離職率低下や生産性向上につながる。
この記事の対象読者
- 小売・飲食業でストレスチェックの運用に課題を感じている人事・店長
- パート・アルバイト比率が高い事業場の衛生管理者
- 外国人従業員を多く抱える企業の担当者
ポイント(4つの成功パターン)
- パターン1: 集団分析を全部門にフィードバックし、各部門が自律的にアクションプランを策定
- パターン2: 24時間シフト制の職場でも1on1面談を活用したコミュニケーション体制の構築
- パターン3: パート比率85%の職場で全員面談制度と相談窓口を整備し、現在の休業者ゼロを達成
- パターン4: 繁忙期を避けた実施時期の工夫と多言語対応で外国人従業員も含めた全員受検を実現
よくある誤解3つ
- 誤解1: パートやアルバイトはストレスチェックの対象外 → 実際は週所定労働時間が正社員の3/4以上なら対象
- 誤解2: 店舗が分散していると集団分析は難しい → 実際は10人以上のグループで地域・業態別分析が可能
- 誤解3: シフト勤務者は受検時間が取れない → 実際はスマホ対応なら5分程度で回答可能
根拠: 厚生労働省「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)」、「令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査」
数字で見る小売・飲食業界のストレス状況
| 項目 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 仕事で強いストレスを感じる労働者の割合 | 82.7%(全業種平均) | 令和5年労働安全衛生調査 |
| 「顧客、取引先等からのクレーム」がストレス要因の割合 | 上位にランクイン(継続的な傾向) | 令和5年労働安全衛生調査 |
| カスタマーハラスメント経験率 | 10.8%(過去3年間) | 令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査 |
| パートタイム労働者のストレス感じる割合 | 65.2% | 令和5年労働安全衛生調査 |
| メンタルヘルス不調による休業・退職者のいた事業所割合 | 13.5% | 令和5年労働安全衛生調査 |
| ストレスチェック集団分析実施率 | 69.2% | 令和5年労働安全衛生調査 |
小売・飲食業界特有のストレス要因とは?
小売業・飲食サービス業は、他業種と比較して以下の特有のストレス要因を抱えています。
業界特有のストレス要因一覧
| カテゴリ | 具体的なストレス要因 |
|---|---|
| 勤務形態 | シフト勤務による不規則な生活リズム、繁忙期の長時間労働、急なシフト変更 |
| 人員体制 | 慢性的な人手不足、欠勤時のカバー負担、教育時間の確保困難 |
| 顧客対応 | クレーム対応、カスタマーハラスメント、感情労働の負担 |
| 労働環境 | 立ち仕事による身体的負担、店舗間異動、本部との関係 |
| 雇用形態 | パート・アルバイト比率の高さ、雇用の不安定さ、キャリアパスの不透明さ |
| 従業員構成 | 外国人労働者の増加、言語・文化の壁、コミュニケーション困難 |
カスタマーハラスメントの影響
厚生労働省の調査によると、過去3年間に顧客等からの著しい迷惑行為を経験した労働者の割合は10.8%に達しています(令和5年度調査)。特に小売・飲食業界は顧客接点が多く、以下のような深刻な影響が報告されています(令和2年度調査)。
- 「怒りや不満、不安などを感じた」(67.6%)
- 「仕事に対する意欲が減退した」(46.2%)
- 繰り返し経験した労働者では「眠れなくなった」(21.2%)
カスタマーハラスメントとメンタルヘルス
カスタマーハラスメントへの対策が不十分な場合、従業員のメンタルヘルス不調リスクが高まります。ストレスチェックの集団分析結果と合わせて、組織的な対策が必要です。
事例1: 大手小売チェーンA社(東京都、グループ約4,900名)—「攻めのストレスチェック」で全部門改善を実現
企業概要と導入背景
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種 | 小売業(衣料・インテリア・フィンテック) |
| 従業員数 | グループ約4,900名(正社員・パート含む) |
| 展開 | 全国の商業施設に多数の店舗を展開 |
| 課題 | ストレスチェックを「義務だから実施」で終わらせず職場改善に活かしたい |
A社は全国展開の大手小売チェーン。2016年のストレスチェック義務化に際し、「マイナスをゼロにするだけでなく、プラスをつくる」という独自のコンセプトで取り組みを開始した。従業員が自ら職場づくりに参加する「攻めのストレスチェック」として運用している。
取り組み内容
1. カスタム設問を加えた80項目調査票の導入
- 標準80項目調査票に、独自設問約20問を追加
- 「過去6か月間に職場の健康づくり活動に参加したか」など自社特有の課題を把握
- 参加者と非参加者のストレス・エンゲージメント差異を分析
2. 200以上の全部門への集団分析フィードバック
- 保健師が各部門の分析結果にコメントを付けて管理職に返却
- 各部門が自主的なアクションプランを策定・実行
- 翌年に中間確認し、継続改善をサポート
3. 相談窓口「HANASOU」の設置と周知
- 相談しやすい名称・窓口設計に変更
- 名称変更後、利用件数が1.7倍に増加
成果
| 指標 | 導入初年度(2016年) | 3年目(2018年) |
|---|---|---|
| 受検率 | 制度義務化に合わせ開始 | 約98% |
| 改善確認部門 | — | 200以上の部門中約8割で改善を確認 |
| 相談窓口利用件数 | — | 名称変更後1.7倍に増加 |
成功のポイント: 集団分析結果を全200以上の部門に返却し、各部門が自律的にアクションプランを策定する仕組みが鍵。「義務として実施する」のではなく、職場づくりのPDCAサイクルの起点にストレスチェックを位置付けたことで、毎年約8割の部門で改善が確認された。
事例2: 宿泊・接客業B社(近畿地方、約160名)—シフト制の壁を越えた1on1コミュニケーション体制
企業概要と導入背景
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種 | 宿泊業(旅館) |
| 従業員数 | 約160名 |
| 特徴 | 24時間365日営業、全員集合が困難なシフト制 |
| 課題 | ストレスチェックのデジタル化で受検率が低下。若手の早期離職が課題 |
B社は老舗旅館。接客業特有の24時間365日・シフト制勤務のため、全員が一堂に会することが難しい。ストレスチェックを「紙」で実施していた時期は受検率80〜90%を維持していたが、デジタル化移行後に約60%まで低下したという課題を抱えていた。
取り組み内容
1. ストレスチェック受検機会の複数設定
- 57項目版を健康診断と同時期に実施
- 部門・シフトグループごとにミーティングを開催し、受検機会を確保
- 近隣の産業医を選定することで相談のハードルを低減
2. フロント部門での月1回1on1面談の制度化
- 「かたい話はあまりせず、相手に話してもらう」スタンスを徹底
- 心理的安全性を重視した関係構築
- 入社3年目までの若手従業員には定期アンケートも実施
3. 日常的な感謝文化の醸成
- 「ありがとう・いいねカード」制度で、日常的な感謝表現を促進
- 年間最多感謝大賞を表彰し、組織全体の風土づくりに活用
- 職場のつながりを強化し、心理的安全性を高める
成果
| 指標 | 取り組み前 | 取り組み後 |
|---|---|---|
| 若手早期離職 | 入社間もない時期の退職が課題 | 減少傾向(「最近は改善」と経営層が評価) |
| 相談しやすい環境 | 管理職が把握しにくい状況 | 1on1で日常的に課題を把握・対応 |
成功のポイント: シフト制のため全員が集まれない中、「グループ別ミーティングの活用」と「1on1面談の月次実施」で接点を確保。心理的安全性を重視したコミュニケーションが若手定着の改善につながった。
事例3: 地域密着型スーパーチェーンC社(西日本、約4,100名)—全員面談と復職支援体制の構築
企業概要と導入背景
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種 | 小売業(スーパーマーケット) |
| 従業員数 | 約4,100名(うちパート・アルバイト約3,500名) |
| 店舗数 | 地域内に54店舗 |
| 課題 | パート比率85%の職場でメンタルヘルス不調による休業の長期化が課題 |
C社は西日本を中心に54店舗を展開するスーパーチェーン。全従業員の約85%がパート・アルバイトという雇用構造の中、全員参加のメンタルヘルス対策体制を構築した。
取り組み内容
1. 全従業員への年1回面談制度
- 人事評価とは分離した「相談のための面談」として位置付け
- 「人事部門は評価を行わない」ことを明確にすることで信頼関係を構築
- 面談を通じて「年末休暇の未取得が慣例化していた」などの組織課題も把握・改善
2. 従業員相談室(社内EAP)の設置
- 産業カウンセラーが相談を受ける窓口を設置
- ハラスメント相談窓口と連携し、多様な相談に対応
- メール相談にも対応し、対面に抵抗がある従業員もアクセスしやすい体制に
3. 体系的な復職支援体制の整備
- 2012年に所得補償保険(LTD:Long Term Disability)を導入し、休業中の収入を保護
- 人事部門が主体となり、産業医・主治医と連携した復職プログラムを運営
- 配置転換も含めた柔軟な復職先の確保
成果
| 指標 | 体制整備前 | 現在 |
|---|---|---|
| メンタルヘルス休業者数 | 年複数名、長期化傾向 | 現在0名 |
| 休業期間 | 長期化が課題 | 発生時は短期で解決 |
| 相談受付状況 | 把握困難 | 継続的な相談受付体制を維持 |
成功のポイント: 「評価と分離した面談」という仕組みが信頼関係の基盤に。パート・アルバイトも含めた全員が年1回面談を受ける体制が、不調の早期発見につながっている。LTD導入による収入保護が、従業員が安心して休業・治療に専念できる環境を整えた。
事例について
本記事の事例は、厚生労働省「こころの耳」に掲載されている小売業・宿泊業の企業事例を参考に、プライバシー保護のため匿名化して紹介しています。各事例の詳細は以下をご参照ください。
小売・飲食業界でストレスチェックを成功させる5つのポイント
ポイント1: スマホ対応は必須
店舗スタッフはPCに触れる機会が少なく、休憩時間も限られています。スマホで5分程度で回答できる環境整備が受検率向上の鍵です。
ポイント2: 実施時期は繁忙期を避ける
小売業は年末商戦、飲食業は忘年会シーズンなど、業界特有の繁忙期があります。閑散期に実施時期を設定することで、回答率が向上します。
| 業態 | 避けるべき時期 | 推奨時期 |
|---|---|---|
| 小売(アパレル) | 12月〜1月、3月〜4月 | 5月〜6月、9月〜10月 |
| 飲食(居酒屋) | 12月、3月〜4月 | 1月下旬〜2月、9月〜10月 |
| スーパー | 年末年始、お盆 | 1月下旬〜2月、5月〜6月 |
ポイント3: 多言語対応で全員参加を実現
外国人従業員が増加する中、日本語だけの調査票では正確なストレス状況を把握できません。厚生労働省は10言語の調査票を提供していますが、より多くの言語に対応したシステムを活用することで全員参加を実現できます。
ポイント4: 集団分析は店舗・部門単位で実施
店舗が分散している場合でも、10人以上の単位で集団分析が可能です。
- 地域別: 都市部店舗 vs 郊外店舗
- 業態別: 直営店 vs フランチャイズ
- 職種別: ホールスタッフ vs キッチンスタッフ
- 勤務形態別: 正社員 vs パート・アルバイト
ポイント5: カスタマーハラスメント対策と連動させる
ストレスチェックで「対人関係のストレス」が高い場合、カスタマーハラスメントが原因の可能性があります。厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を参考に、組織的な対策を講じましょう。
パート・アルバイトのストレスチェック対応
対象となる基準
パート・アルバイトであっても、以下の条件を満たす場合はストレスチェックの対象となります。
| 条件 | 詳細 |
|---|---|
| 雇用期間 | 1年以上、または1年以上の雇用が見込まれる |
| 労働時間 | 週の所定労働時間が正社員の3/4以上 |
パート・アルバイトへの配慮事項
- 受検時間の確保: 勤務時間内に受検時間を設定する
- プライバシーへの不安解消: 結果が雇用継続に影響しないことを明確に説明
- スマホ対応: PC環境がなくても受検できるようにする
- 自動リマインド: 未受検者への自動フォローで管理負担を軽減
パートタイム労働者のストレス傾向
厚生労働省の調査によると、パートタイム労働者の65.2%が仕事で強いストレスを感じています。正社員(86.1%)より低いものの、「仕事の量」「対人関係」がストレス要因の上位に挙がっています。
関連記事
- ストレスチェック制度とは?義務化の対象・実施手順を徹底解説
- 外国人労働者へのストレスチェック|多言語対応と配慮すべきポイント
- 高ストレス者への対応マニュアル|面談から職場復帰まで全手順
- ストレスチェック集団分析の活用方法と職場改善への活かし方
ミニ用語集
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| カスタマーハラスメント | 顧客等からの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等の著しい迷惑行為 |
| シフト勤務 | 勤務時間帯が固定されず、交代制で勤務する形態。生活リズムの乱れがストレス要因に |
| 感情労働 | 顧客に対して自分の感情をコントロールしながら接客する労働形態 |
| 集団分析 | ストレスチェック結果を部署・店舗単位で集計し、職場ごとのストレス状況を把握すること |
| 総合健康リスク | 量-コントロール判定図と職場の支援判定図から算出。100が全国平均 |
| EAP | Employee Assistance Programの略。従業員支援プログラム |
| LTD | Long Term Disabilityの略。長期所得補償保険。休業中の収入を保障する制度 |
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参考文献・出典
よくある質問
A. はい、雇用期間1年以上(または1年以上の見込み)かつ週の所定労働時間が正社員の3/4以上であれば、パート・アルバイトもストレスチェックの対象となります。短時間勤務者でも条件を満たせば対象です。
A. 可能です。ただし、個人が特定されないよう10人以上の単位で実施する必要があります。地域別、業態別、職種別など、10人以上のグループに分けることで分析できます。
A. スマホ対応システムの導入、QRコードの店舗掲示、繁忙期を避けた実施時期の設定、自動リマインドメールの活用が効果的です。勤務時間内に受検時間を確保することも重要です。
A. 多言語対応のストレスチェックシステムを導入し、従業員の母国語で受検できる環境を整備しましょう。MentalMapは12言語に対応しており、追加料金なしで利用できます。また、制度説明も多言語で行うことが重要です。
A. ストレスチェックの集団分析で「対人関係のストレス」が高い場合、カスタマーハラスメントが原因の可能性があります。厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を参考に、組織的な対策を講じることで改善につながります。