衛生委員会とストレスチェック|審議すべき事項と運営のポイント
衛生委員会はストレスチェック制度において11項目の審議事項を調査審議する義務がある。常時50人以上の事業場は設置義務があり、毎月1回以上開催、議事録は3年間保存が必要。構成メンバー、審議事項、運営ポイント、議事録作成方法を解説。

結論(2行で分かる) 衛生委員会は、ストレスチェック制度の実施前に11項目の審議事項を調査審議し、社内規程を策定する必要がある。議事録は3年間の保存義務があり、毎月1回以上の開催が法定義務。
この記事の対象読者
- 衛生委員会でストレスチェックについて審議を行う担当者
- 衛生委員会の設置・運営方法を知りたい人事・総務担当者
- ストレスチェック制度を適切に運用したい衛生管理者・産業医
ポイント(5点)
- 設置義務: 常時50人以上の事業場は衛生委員会の設置が法的義務(労働安全衛生法第18条)
- 審議義務: ストレスチェック実施前に11項目の事項を衛生委員会で調査審議する必要がある
- 構成メンバー: 総括安全衛生管理者、衛生管理者、産業医、衛生経験を有する労働者で構成
- 開催頻度: 毎月1回以上の開催が義務(労働安全衛生規則第23条)
- 議事録保存: 重要事項の記録を作成し、3年間保存する義務がある
よくある誤解3つ
- 誤解1: ストレスチェックの実施方法は事業者が決めればよい → 衛生委員会での審議が必須
- 誤解2: 衛生委員会は年に数回開催すればよい → 毎月1回以上の開催が義務
- 誤解3: 議事録の保存期間はストレスチェック結果と同じ5年 → 議事録は3年間保存
根拠: 労働安全衛生法第18条・第19条、労働安全衛生規則第22条・第23条、ストレスチェック制度実施マニュアル
衛生委員会の数字・期限 早見表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設置義務 | 常時50人以上の労働者を使用する事業場 |
| 開催頻度 | 毎月1回以上 |
| 構成メンバー | 総括安全衛生管理者、衛生管理者、産業医、衛生経験を有する労働者 |
| 議事録保存期間 | 3年間 |
| ストレスチェック審議事項 | 11項目 |
| 未設置の罰則 | 50万円以下の罰金(労働安全衛生法第120条) |
| 委員の推薦 | 議長以外の半数は労働者代表の推薦に基づき指名 |
衛生委員会とは何か?
衛生委員会の定義と目的
衛生委員会とは、労働者の健康障害防止と健康保持増進に関する重要事項を調査審議する委員会です。労働安全衛生法第18条に基づき、一定規模以上の事業場に設置が義務付けられています。
衛生委員会は、事業者と労働者が協力して職場の衛生管理を推進するための場であり、ストレスチェック制度においても重要な役割を担います。
労働安全衛生法 第18条(条文要旨)
事業者は、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。
(参照: e-Gov法令検索「労働安全衛生法」)
衛生委員会と安全委員会の違い
| 委員会 | 目的 | 設置業種 |
|---|---|---|
| 衛生委員会 | 健康障害防止、健康保持増進 | 全業種(50人以上) |
| 安全委員会 | 労働災害防止 | 特定業種のみ(規模要件あり) |
| 安全衛生委員会 | 両委員会の統合 | 両方の設置義務がある事業場 |
両方の委員会を設置すべき事業場では、安全衛生委員会として統合して設置することが認められています(労働安全衛生法第19条)。
衛生委員会の設置義務
設置が必要な事業場
常時50人以上の労働者を使用する全ての事業場に、衛生委員会の設置が義務付けられています(業種を問わず)。
「常時50人」には、正社員だけでなく以下も含まれます。
- パートタイマー・アルバイト
- 契約社員
- 派遣労働者(派遣先でカウント)
設置しなかった場合の罰則
衛生委員会を設置しなかった場合、50万円以下の罰金の対象となります(労働安全衛生法第120条第1号)。
注意: 労働基準監督署の調査では、衛生委員会の設置状況と議事録の保存状況が確認されることがあります。設置義務を満たしていない場合は是正勧告の対象となります。
衛生委員会の構成メンバー
法定の構成員
衛生委員会は、以下のメンバーで構成されます(労働安全衛生法第18条第2項、第4項)。
| 役割 | 説明 | 人数 |
|---|---|---|
| 議長 | 総括安全衛生管理者、またはそれに準ずる者 | 1名 |
| 衛生管理者 | 事業者が指名した衛生管理者 | 1名以上 |
| 産業医 | 事業者が指名した産業医 | 1名以上 |
| 衛生経験者 | 衛生に関し経験を有する労働者 | 必要数 |
委員の指名ルール
重要: 議長以外の委員の半数については、労働者の過半数で組織する労働組合(または労働者の過半数を代表する者)の推薦に基づき指名する必要があります。
これは、衛生委員会が労使協調の場として機能するための重要な要件です。
構成の具体例
| 役割 | 氏名(例) | 所属 |
|---|---|---|
| 議長 | 山田太郎(総務部長) | 管理部門 |
| 衛生管理者 | 鈴木花子 | 人事部 |
| 産業医 | 佐藤医師 | 嘱託産業医 |
| 労働者代表(労組推薦) | 田中一郎 | 営業部 |
| 労働者代表(労組推薦) | 高橋次郎 | 製造部 |
ストレスチェックに関する審議事項(11項目)
衛生委員会で調査審議すべき11項目
労働安全衛生規則第22条に基づき、衛生委員会ではストレスチェック制度に関して以下の11項目を調査審議する必要があります。
| No. | 審議事項 | 具体的な内容 |
|---|---|---|
| 1 | 目的の周知方法 | ストレスチェック制度の目的を労働者にどのように周知するか |
| 2 | 実施体制 | 実施者、共同実施者、実施代表者、実施事務従事者の選任・明示 |
| 3 | 実施方法 | 使用する調査票、高ストレス者の選定基準、実施頻度・時期、面接指導申出方法 |
| 4 | 集団分析の方法 | 集団ごとの集計・分析の方法(部署別、職種別等) |
| 5 | 受検情報の取扱い | ストレスチェックの受検の有無の情報をどう取り扱うか |
| 6 | 結果の保存方法 | ストレスチェック結果の記録をどのように保存するか |
| 7 | 結果の利用目的・方法 | ストレスチェック、面接指導、集団分析結果の利用目的・利用方法 |
| 8 | 情報の開示・訂正等 | 結果の開示、訂正、追加、削除の請求手続き |
| 9 | 苦情処理 | 情報の取扱いに関する苦情処理の方法 |
| 10 | 不利益取扱いの周知 | 禁止される不利益取扱いを労働者に周知する方法 |
| 11 | 受検推奨の周知 | 全労働者が受検することが望ましい旨の周知 |
審議のタイミング
| タイミング | 審議内容 |
|---|---|
| ストレスチェック実施前 | 11項目すべてを審議し、社内規程を策定 |
| ストレスチェック実施後 | 実施状況の報告、課題の抽出、次年度への改善点 |
| 集団分析結果判明後 | 分析結果の共有、職場環境改善措置の検討 |
審議の進め方
厚生労働省が発行する「ストレスチェック制度実施マニュアル」には、ストレスチェック実施規程のひな形が掲載されています。このひな形を活用すれば、穴埋め式で審議を進めることができます。
衛生委員会の効果的な運営ポイント
開催頻度と時間
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法定開催頻度 | 毎月1回以上 |
| 推奨時間 | 1回あたり60〜90分 |
| 開催時間帯 | 業務時間内(参加者の負担軽減) |
年間スケジュール例(ストレスチェック関連)
| 月 | 議題例 |
|---|---|
| 4月 | ストレスチェック年間計画の審議、実施規程の確認・更新 |
| 5月 | 実施体制の確認、調査票の選定、周知方法の決定 |
| 6月 | ストレスチェック実施状況の中間報告 |
| 7月 | 受検率の報告、未受検者への対応方針 |
| 8月 | 実施結果の報告、高ストレス者への対応状況 |
| 9月 | 集団分析結果の報告・審議 |
| 10月 | 職場環境改善計画の策定 |
| 11月 | 労基署報告書の内容確認 |
| 12月 | 年間活動の振り返り、次年度への課題整理 |
| 1〜3月 | 職場環境改善の進捗確認、次年度計画の検討 |
効果的な運営のコツ
1. 事前準備の徹底
- 議題と資料を事前に配布
- 前回議事録の確認
- 産業医・衛生管理者との事前打ち合わせ
2. 議論の活性化
- 現場の声を反映できる委員構成
- 労働者代表からの意見聴取
- 具体的なデータに基づく議論
3. 決定事項のフォローアップ
- 決定事項の進捗管理
- 次回会議での報告
- 従業員への周知徹底
議事録の作成・保存
議事録の記載事項
労働安全衛生規則第23条第4項に基づき、以下の事項を記録する必要があります。
| 記載事項 | 内容 |
|---|---|
| 開催日時・場所 | 会議の基本情報 |
| 出席者 | 委員の出欠状況 |
| 議題 | 審議した事項 |
| 審議内容 | 各議題についての議論の概要 |
| 委員会の意見 | 委員会としての結論・意見 |
| 講じた措置 | 決定事項に基づき実施した措置 |
| 次回予定 | 次回開催日、継続審議事項 |
保存期間
議事録の保存期間は3年間です(労働安全衛生規則第23条第4項)。
保存期間の比較
| 書類 | 保存期間 |
|---|---|
| 衛生委員会議事録 | 3年間 |
| ストレスチェック結果 | 5年間 |
| 面接指導結果 | 5年間 |
| 健康診断結果 | 5年間 |
議事録のひな形(ストレスチェック審議用)
第○○回 衛生委員会議事録
開催日時: 2026年○月○日(○)○○:○○〜○○:○○
開催場所: ○○会議室
【出席者】
議長: ○○○○(総務部長)
委員: ○○○○(衛生管理者)、○○○○(産業医)、
○○○○(労働者代表)、○○○○(労働者代表)
【議題1】ストレスチェック実施計画について
・実施時期: 2026年○月〜○月
・対象者: 全従業員○○名
・調査票: 職業性ストレス簡易調査票(57項目)
・高ストレス者選定基準: 厚労省マニュアルに基づく方法
【議題2】集団分析の方法について
・部署別(10人以上の単位)で実施
・分析結果は管理職研修で活用
【決定事項】
1. 実施計画を承認
2. 実施規程を○月○日までに周知
【次回予定】
○月○日(○)○○:○○〜
労働者への周知義務
開催の都度、議事の概要を労働者に周知する必要があります(労働安全衛生規則第23条第3項)。
周知方法の例
- 社内イントラネットへの掲載
- 掲示板への掲示
- 社内メールでの配信
- 朝礼等での報告
50人未満の事業場の対応
衛生委員会に代わる対応
常時50人未満の事業場では、衛生委員会の設置義務はありません。ただし、安全または衛生に関する事項について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けるよう努める必要があります(労働安全衛生規則第23条の2)。
具体的な対応例
- 安全衛生懇談会の開催
- 従業員ミーティングでの意見聴取
- アンケートによる意見収集
50人未満義務化への備え
2025年5月14日公布の改正労働安全衛生法により、50人未満の事業場にもストレスチェック実施が義務化されます(施行は公布から3年以内、最長で2028年5月)。義務化に備え、今から衛生委員会に準じた体制を整備しておくことをお勧めします。
MentalMapで衛生委員会の運営を効率化
MentalMapは、衛生委員会でのストレスチェック審議を支援する機能を備えています。
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ミニ用語集
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 衛生委員会 | 労働者の健康障害防止と健康保持増進に関する事項を調査審議する委員会 |
| 安全衛生委員会 | 安全委員会と衛生委員会を統合した委員会 |
| 総括安全衛生管理者 | 安全管理者・衛生管理者を指揮し、安全衛生業務を統括管理する者 |
| 衛生管理者 | 労働者の健康障害防止のための作業環境管理等を行う有資格者 |
| 実施者 | ストレスチェックを企画し、結果の評価を行う医師・保健師等 |
| 集団分析 | ストレスチェック結果を部署等の集団ごとに集計・分析すること |
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参考文献・出典
よくある質問
A. 常時50人以上の労働者を使用する事業場は、業種を問わず設置義務があります。設置しなかった場合、50万円以下の罰金の対象となります(労働安全衛生法第120条)。
A. 毎月1回以上の開催が義務付けられています(労働安全衛生規則第23条第1項)。年に数回の開催では法定要件を満たしません。
A. 委員会の意見、講じた措置、重要な議事については、記録を作成し3年間保存する必要があります(労働安全衛生規則第23条第4項)。
A. はい、使用する調査票(57項目、80項目等)は衛生委員会での調査審議事項です。外部機関から提案された調査票であっても、衛生委員会で審議する必要があります。
A. 産業医は衛生委員会の構成員として指名されますが、毎回の出席が法律で義務付けられているわけではありません。ただし、専門的な見地からの助言が必要なため、可能な限り出席することが望ましいです。
