ストレスチェック集団分析の読み方|仕事のストレス判定図の見方と活用法
ストレスチェック集団分析の読み方と職場環境改善への活用法を解説。仕事のストレス判定図(量-コントロール判定図・職場の支援判定図)の見方、健康リスクの計算と評価基準、10人未満の部署の対応まで網羅。

結論(2行で分かる) 集団分析は「仕事のストレス判定図」を使って部署ごとのストレス状況を可視化し、職場環境改善につなげるための分析手法。法的には努力義務だが、実施により高ストレス者の減少等の効果が確認されている。
この記事の対象読者
- 集団分析レポートの読み方を知りたい人事・総務担当者
- 仕事のストレス判定図の見方を理解したい衛生管理者
- 経営層・管理職への説明資料を作成したい担当者
ポイント(5ステップ)
- Step1: 集団分析の法的位置づけと目的を理解する
- Step2: 仕事のストレス判定図(2つの判定図)の読み方を習得する
- Step3: 健康リスク(総合・量-コントロール・サポート)を計算・評価する
- Step4: 全国平均との比較、部署間比較で課題を特定する
- Step5: 改善施策を立案し、経年比較でPDCAを回す
よくある誤解3つ
- 誤解1: 集団分析は義務である → 実際は努力義務(ただし実施事業場の約70%が取り組んでいる)
- 誤解2: 10人未満の部署は一切分析できない → 実際は全員同意があれば可能
- 誤解3: 健康リスク100は危険な数値 → 実際は全国平均(基準値)であり問題なし
根拠: 厚生労働省「ストレスチェック制度実施マニュアル」、「これからはじめる職場環境改善」、こころの耳
集団分析 数字早見表
| 項目 | 数値・内容 |
|---|---|
| 法的位置づけ | 努力義務(労働安全衛生規則第52条の14) |
| 実施率 | ストレスチェック実施事業場の約70% |
| 最小集計単位 | 原則10人以上(10人未満は全員同意で可能) |
| 主な分析手法 | 仕事のストレス判定図(2種類) |
| 健康リスク基準値 | 全国平均 = 100 |
| 要注意水準 | 総合健康リスク120以上 |
| 危険水準 | 総合健康リスク150以上 |
| 改善効果 | 職場環境改善により高ストレス者の減少等の効果が確認されている |
集団分析とは何か?
集団分析の定義
集団分析とは、ストレスチェックの個人結果を部署・職種・年齢層などの集団単位で集計・分析し、職場ごとのストレス状況を把握する手法です。
労働安全衛生規則第52条の14では、事業者は実施者に「一定規模の集団ごとに集計・分析」させ、その結果を勘案して必要な措置を講ずるよう「努めなければならない」と規定されています。
法的位置づけ:努力義務とは?
集団分析は努力義務です。義務ではないため、実施しなくても罰則はありません。しかし、以下の理由から実施が推奨されています。
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 安全配慮義務 | 職場環境を把握・改善する取り組みは安全配慮義務の一環 |
| 職場改善効果 | 集団分析結果を活用した改善で高ストレス者の減少が期待できる |
| 実施率の実態 | ストレスチェック実施事業場の約70%が既に取り組んでいる |
努力義務と義務の違い
- 義務: 違反すると罰則がある(例:ストレスチェックの実施は50人以上の事業場で義務)
- 努力義務: 違反しても罰則はないが、実施が望ましい(集団分析はこちら)
集団分析の目的
集団分析を実施する目的は、個人の問題ではなく職場環境の問題として捉え、組織的な改善につなげることです。
| 目的 | 内容 |
|---|---|
| 職場の課題を可視化 | 個人では見えない組織的な問題を発見 |
| 改善の優先順位付け | どの部署・どの要因に注力すべきか判断 |
| 経営層への説明材料 | 客観的データで投資判断を支援 |
| 改善効果の測定 | 施策実施前後の比較(経年比較)で効果を検証 |
仕事のストレス判定図の見方
判定図の構成
「仕事のストレス判定図」は、厚生労働省が提供する集団分析の標準的な手法で、2つの判定図で構成されています。
- 量-コントロール判定図:仕事の負担と裁量のバランスを評価
- 職場の支援判定図:上司・同僚からのサポート状況を評価
1. 量-コントロール判定図
軸の意味
- 横軸:仕事の量的負担(右に行くほど負担が多い)
- 縦軸:仕事のコントロール度(下に行くほど裁量が少ない)
読み方のポイント
プロットされた点が右下に位置するほど、ストレスが高い状態です。
| 位置 | 状態 | 評価 | 対策の方向性 |
|---|---|---|---|
| 左上 | 低負担・高コントロール | 良好 | 現状維持 |
| 右上 | 高負担・高コントロール | やや注意 | 業務量の適正化を検討 |
| 左下 | 低負担・低コントロール | やや注意 | 裁量権の拡大を検討 |
| 右下 | 高負担・低コントロール | 危険 | 優先的に改善が必要 |
「右下」の組み合わせが最も危険
仕事量が多いのに自分で仕事のペースや方法を決められない状態は、最もストレスが高くなります。この状態が続くと、メンタルヘルス不調のリスクが高まります。
2. 職場の支援判定図
軸の意味
- 横軸:上司の支援(左に行くほどサポートが少ない)
- 縦軸:同僚の支援(下に行くほどサポートが少ない)
読み方のポイント
プロットされた点が左下に位置するほど、サポート不足でストレスが高い状態です。
| 位置 | 状態 | 評価 | 対策の方向性 |
|---|---|---|---|
| 右上 | 上司・同僚の支援が高い | 良好 | 現状維持・さらなる強化 |
| 左上 | 同僚の支援は高いが上司が低い | やや注意 | 管理職研修の実施 |
| 右下 | 上司の支援は高いが同僚が低い | やや注意 | チームビルディングの強化 |
| 左下 | 上司・同僚の支援が低い | 危険 | 優先的に改善が必要 |
健康リスクの計算方法と解釈
健康リスクとは?
各判定図には「健康リスク」という数値が表示されます。これは、その職場で働く人がストレス関連の健康問題を起こすリスクを、全国平均と比較して示した指標です。
- 全国平均 = 100(基準値)
- 数値が100より高いほど、健康リスクが高い
- 数値が100より低いほど、健康リスクが低い
2種類の健康リスク
| 種類 | 算出元 | 意味 |
|---|---|---|
| 健康リスクA | 量-コントロール判定図 | 仕事の負担と裁量のバランスによるリスク |
| 健康リスクB | 職場の支援判定図 | 上司・同僚のサポート不足によるリスク |
総合健康リスクの計算式
2つの健康リスクを組み合わせて「総合健康リスク」を算出します。
総合健康リスク = 健康リスクA × 健康リスクB ÷ 100
計算例
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 健康リスクA(量-コントロール) | 110 |
| 健康リスクB(職場の支援) | 115 |
| 総合健康リスク | 110 × 115 ÷ 100 = 126.5 |
この例では、全国平均より約26%高い健康リスクがあることを示しています。
総合健康リスクの評価基準
| 総合健康リスク | 評価 | 対応 |
|---|---|---|
| 100未満 | 良好 | 現状維持・さらなる改善 |
| 100〜119 | 全国平均〜やや注意 | 要因分析と改善検討 |
| 120〜149 | 要注意 | 優先的に職場環境改善が必要 |
| 150以上 | 危険水準 | 早急な対応が必要 |
健康リスク100は「危険」ではありません
健康リスク100は全国平均と同じ水準を意味します。100を下回れば全国平均より良好、100を上回れば全国平均より要注意という解釈です。
全国平均との比較方法
集団分析結果を解釈する際は、必ず全国平均(100)との比較を行います。
| 健康リスク | 解釈 | 例 |
|---|---|---|
| 80 | 全国平均より20%低リスク | 良好な職場環境 |
| 100 | 全国平均と同等 | 標準的な状態 |
| 120 | 全国平均より20%高リスク | 改善検討が必要 |
| 150 | 全国平均より50%高リスク | 早急な対応が必要 |
部署間比較のポイント
部署間比較で分かること
集団分析の最大の効果は、部署間の比較によって職場環境の課題が明確になることです。
| 比較観点 | 発見できること |
|---|---|
| 部署ごとの健康リスク | どの部署が特に高リスクか |
| 要因の違い | 仕事量が問題か、サポート不足が問題か |
| 好事例の発見 | 健康リスクが低い部署の取り組みを横展開 |
部署間比較の注意点
1. 10人未満の部署の匿名性確保
原則として、10人未満の部署は集団分析を行いません。 これは個人が特定されるリスクを避けるためです。
| 人数 | 対応 |
|---|---|
| 10人以上 | そのまま集団分析が可能 |
| 10人未満 | 原則として分析対象外(後述の例外あり) |
2. 属性の掛け合わせに注意
部署×性別×年齢層などで細分化しすぎると、個人が特定されるリスクが高まります。
NG例: 営業部×女性×50代 → 該当者2名 → 個人特定の恐れ
OK例: 営業部全体 → 該当者25名 → 匿名性確保
3. 数値だけでなく背景を確認
健康リスクが高い部署があっても、数値だけで判断せず、背景要因を確認することが重要です。
| 確認事項 | 例 |
|---|---|
| 業務特性 | 繁忙期、プロジェクト状況 |
| 組織変更 | 異動、人員増減 |
| 外部環境 | 顧客対応、市場変化 |
結果を職場環境改善に活かす方法
Step1: 結果を正しく読み取る
- 全国平均(100)との比較で自社の立ち位置を確認
- 部署別の比較で課題のある部署を特定
- 2つの判定図でどの要因が問題かを確認
- 経年比較で改善傾向・悪化傾向を確認
Step2: 課題を特定する
判定図の結果から、どの要因が課題かを特定します。
| 判定図の結果 | 考えられる課題 |
|---|---|
| 仕事の量的負担が高い | 業務量過多、人員不足、繁忙期の偏り |
| コントロールが低い | 裁量権の不足、マイクロマネジメント |
| 上司の支援が低い | 管理職のコミュニケーション不足、多忙 |
| 同僚の支援が低い | チーム内の協力体制不足、孤立 |
Step3: 改善施策を立案する
課題に対応した改善施策を検討します。
| 課題 | 改善施策例 |
|---|---|
| 仕事の量的負担 | 業務分担の見直し、人員配置の調整、業務効率化 |
| コントロール不足 | 裁量権の拡大、目標設定への参画、スキルアップ支援 |
| 上司の支援不足 | 管理職研修、1on1の導入、フィードバック機会の増加 |
| 同僚の支援不足 | チームビルディング、情報共有の仕組み、協力体制構築 |
Step4: 合意形成と実行
- 衛生委員会での審議:集団分析結果を共有し、改善施策を決定
- 経営層・管理職への説明:データに基づく投資判断を支援
- 改善施策の担当者と期限を設定:責任を明確化
- 小さく始めて効果を確認:パイロット部署での試行
Step5: 経年比較でPDCAを回す
毎年のストレスチェック結果を比較し、改善効果を検証します。
| 比較項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 健康リスクの推移 | 数値が下がっているか |
| 高ストレス者率の推移 | 割合が減少しているか |
| 関連指標 | 欠勤率、離職率、残業時間の変化 |
経年比較の活用法
経年比較は「施策の効果測定」だけでなく、「新たな課題の早期発見」にも役立ちます。数値が悪化している部署は、組織変更や業務変化など背景要因を確認しましょう。
改善効果について
厚生労働省の研究によると、職場環境改善の実施により、労働者のストレス反応が有意に改善する等の効果が確認されています。集団分析結果を活用した継続的な職場環境改善は、高ストレス者の減少やメンタルヘルス不調の予防につながります。
10人未満の部署の扱い
原則:10人以上で集計
集団分析は原則として10人以上の集団で実施します。これは個人が特定されるリスクを避けるためです。
10人未満の場合の3つの対応方法
| 方法 | 内容 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 1. 集団を統合する | 複数の小集団を統合して10人以上にする | 分析が可能になる | 部署ごとの詳細が見えなくなる |
| 2. 全員同意を取得する | 10人未満でも全員の同意があれば分析可能 | 小規模部署も分析できる | 同意取得の手間がかかる |
| 3. 分析対象外とする | 小集団は分析せず、個別フォローで対応 | 匿名性を完全に確保 | 職場環境の把握ができない |
全員同意の取得方法
10人未満の部署で集団分析を行う場合、以下の手順で同意を取得します。
- 集団分析の目的と内容を説明
- 個人が特定される可能性があることを説明
- 同意は任意であり、同意しなくても不利益がないことを説明
- 全員から書面で同意を取得
- 1人でも同意しなければ分析は行わない
注意:全員同意が必要
10人未満の集団では、1人でも同意しない人がいれば集団分析を行うことはできません。同意の強制はNGです。
統合集計の例
| 統合前 | 人数 | 統合後 | 人数 |
|---|---|---|---|
| 人事課 | 5人 | 管理部門 | 18人 |
| 経理課 | 6人 | ||
| 総務課 | 7人 |
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ミニ用語集
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 集団分析 | 個人結果を集団単位で集計・分析し、職場のストレス状況を把握すること |
| 仕事のストレス判定図 | 量-コントロール判定図と職場の支援判定図の2つで構成される分析手法 |
| 健康リスク | 全国平均100を基準とした相対評価。数値が高いほどリスクが高い |
| 総合健康リスク | 2つの判定図から算出。健康リスクA × 健康リスクB ÷ 100 |
| 量-コントロール判定図 | 仕事の量的負担と裁量権のバランスを評価する判定図 |
| 職場の支援判定図 | 上司・同僚からのサポート状況を評価する判定図 |
| 努力義務 | 法的義務ではないが、実施が望ましいとされる取り組み |
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分かりやすい集団分析レポート
- 仕事のストレス判定図を自動生成:2つの判定図をビジュアルで確認
- 全国平均との比較:自社の立ち位置を一目で把握
- 部署別・属性別の詳細分析:課題のある部署を特定
改善効果を測定する機能
- 経年比較レポート:前年との比較で改善効果を可視化
- PDF・Excelレポート出力:経営層への説明資料として活用
- 高ストレス者率の推移:施策の効果を数値で確認
10人未満の小集団にも対応
- 柔軟な集計単位設定:部署統合も簡単に設定可能
- 個人特定リスクへの配慮:10人未満の場合は自動で警告表示
参考文献・出典
よくある質問
A. いいえ、集団分析は努力義務です(労働安全衛生規則第52条の14)。法的な義務ではありませんが、ストレスチェック実施事業場の約70%が取り組んでおり、職場環境改善に効果があることが実証されています。
A. いいえ、100は全国平均(基準値)であり、危険ではありません。100未満は全国平均より良好、100〜119はやや注意、120〜149は要注意、150以上は危険水準とされています。
A. 総合健康リスク = 健康リスクA(量-コントロール判定図)× 健康リスクB(職場の支援判定図)÷ 100 で計算します。例:健康リスクA=110、健康リスクB=115の場合、110×115÷100=126.5となります。
A. 原則として10人以上の集団で実施しますが、10人未満でも全員の書面同意があれば分析可能です。ただし1人でも同意しなければ分析はできません。複数の小集団を統合して10人以上にする方法もあります。
A. 右下は「仕事量が多い」かつ「裁量権が少ない」状態を示します。仕事量が多いのに自分でコントロールできない状態は、最もストレスが高くなることが研究で明らかになっています。
A. 毎年の集団分析結果を比較し、改善施策の効果を検証します。健康リスクや高ストレス者率の推移を確認し、数値が改善していれば施策を継続、悪化していれば追加対策を検討します。