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制度・法令|

ストレスチェックの個人情報保護|取り扱いルールと実務者の守秘義務

ストレスチェック結果は要配慮個人情報であり、本人同意なしの事業者への提供は禁止。実施者・実施事務従事者には守秘義務が課され、違反時は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金。5年間の保存義務、不利益取扱い禁止、適切な同意取得方法まで解説。

ストレスチェックの個人情報保護|取り扱いルールと実務者の守秘義務

この記事のまとめ

結論(2行で分かる)​ ストレスチェックの結果は「要配慮個人情報」に該当し、本人の同意なく事業者に提供することは法律で禁止されている。実施者・実施事務従事者には厳格な守秘義務が課され、違反した場合は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金の対象となる。

この記事の対象読者

  • ストレスチェックの個人情報管理体制を整備したい人事・総務担当者
  • 実施者・実施事務従事者として守秘義務を理解したい方
  • ストレスチェック結果の適切な取り扱いを確認したい事業者

ポイント(5つの重要ルール)​

  1. 結果は実施者から本人のみに直接通知(事業者は閲覧不可)
  2. 事業者への結果提供には本人の個別同意が必要
  3. 実施者・実施事務従事者には守秘義務が課される
  4. ストレスチェック結果は5年間保存義務
  5. 結果を理由とした不利益取扱いは禁止

よくある誤解3つ

  • 誤解1: 会社が従業員の結果を見れる → 本人同意がなければ事業者は結果を見られない
  • 誤解2: 衛生委員会で一括同意を取れば良い → 包括同意は不可、個別同意が必須
  • 誤解3: 人事担当者が結果を管理しても問題ない → 人事権を有する者は実施事務従事者になれない

根拠: 労働安全衛生法第66条の10、第104条、第105条、労働安全衛生規則第52条の10、個人情報保護法第2条第3項

個人情報保護 早見表

項目内容
結果の法的位置づけ要配慮個人情報(個人情報保護法第2条第3項)
結果通知実施者から本人へ直接通知
事業者への提供本人の個別同意が必要
同意取得のタイミング結果通知後に個別確認
包括同意(一括同意)不可(衛生委員会での合議等は認められない)
結果保存期間5年間
守秘義務違反の罰則6か月以下の懲役または50万円以下の罰金
人事権を有する者実施者・実施事務従事者になれない

ストレスチェック結果はなぜ「要配慮個人情報」なのか?

要配慮個人情報の定義

個人情報保護法第2条第3項では、「要配慮個人情報」を「本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報」と定義している。

ストレスチェックの結果は「医師等により行われた健康診断等の結果」に該当し、受診者本人の健康状態が判明する検査の結果として、要配慮個人情報に分類される。

要配慮個人情報の取り扱いルール

ルール内容
取得時の同意あらかじめ本人の同意が必要
第三者提供時の同意あらかじめ本人の同意が必要
オプトアウトの禁止要配慮個人情報はオプトアウト方式での第三者提供不可

ストレスチェック結果の取り扱い違反は二重の罰則リスクがあります。労働安全衛生法違反(守秘義務違反)と個人情報保護法違反の両方に該当する可能性があります。

誰が結果を見れるのか?アクセス権限の整理

結果へのアクセス権限一覧

立場結果へのアクセス条件
本人可能無条件
実施者(医師・保健師等)可能職務上必要な範囲
実施事務従事者可能実施者の指示のもと事務処理に必要な範囲
事業者(人事部門等)本人同意後のみ可能個別の同意取得が必須
人事権を有する者不可同意があっても実施事務従事者になれない
上司・同僚不可いかなる場合も不可

職務と情報の取扱いに関する整理

以下の表は、各立場の者が把握・取得できる情報の範囲を示している。

情報種別受検本人管理監督者実施者実施事務従事者人事労務部門
受検の有無
結果(同意なし)××
結果(同意あり)×
面接申出あり×
面接指導に基づく就業意見
集団分析の結果-

○:把握・取得可(本人の同意なしで把握・取得可)
△:就業上の措置実施等に必要な範囲・内容に限って把握・取得可
×:把握・取得不可
※:各事業場で検討

: 管理監督者とは、受検労働者の直属の上司等を指す。事業者(人事権者)は結果へのアクセスが制限されており、本人同意があっても実施事務従事者にはなれない。

実施者とは誰か?

実施者は、ストレスチェックを企画し、結果の評価を行う有資格者を指す。

実施者になれる資格:

  • 医師(産業医に限らない)
  • 保健師
  • 厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師・精神保健福祉士・歯科医師・公認心理師

実施事務従事者とは誰か?

実施事務従事者は、実施者の指示のもとで事務作業を行う者を指す。

実施事務従事者の業務:

  • 調査票の配布・回収
  • データ入力・集計
  • 結果の保存管理

人事権を有する者は実施事務従事者になれません。​ 労働安全衛生規則第52条の10第2項では、「検査を受ける労働者について解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、検査の実施の事務に従事してはならない」と規定されています。

人事権を有する者の範囲

「解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ」とは、当該労働者の人事を決定する権限を持つこと又は人事について一定の判断を行う権限を持つことを指す。人事を担当する部署に所属する者であっても、こうした権限を持たない場合は該当しない。

立場実施の事務への従事
社長(事業者)不可
専務、人事部長など不可
人事課の職員(人事権なし)可能
その他の部署の職員可能

実施事務従事者の留意事項

実施事務従事者には、以下の点に特に注意が必要である。

  1. 秘密の保持義務: 実施事務従事者には、労働安全衛生法第104条の規定に基づき秘密の保持義務が課される

  2. 指示系統の遵守: 実施事務従事者の事務は実施者の指示により行うものである。実務担当者や所属部署の上司等の指示を受けてストレスチェックの実施の事務に従事するものではない

  3. 情報の利用制限: ストレスチェックの実施の事務に従事することによって知り得た労働者の秘密を、自らの所属部署の業務のうちストレスチェックの実施の事務とは関係ない業務に利用してはならない

人事権を有しない者であっても、ストレスチェックの実施の事務に従事させる場合は、事業者が当該労働者の解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者を当該ストレスチェックの実施の事務に従事させてはならないものである。​

同意なしでの情報提供禁止—なぜ厳格なのか?

法律の規定

労働安全衛生法第66条の10第2項では、「ストレスチェックを実施した医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者は、労働者の同意を得ないでストレスチェックの結果を事業者に提供してはならない」と明確に規定している。

同意取得の正しい方法

方法可否理由
結果通知後に個別に同意確認適法な方法
衛生委員会での包括同意不可個別同意が必要
受検前の一括同意不可結果を知る前の同意は無効
就業規則での一律同意不可強制的な同意は無効

適法な同意取得の手順:

  1. ストレスチェックを実施
  2. 実施者から本人に結果を通知
  3. 結果通知後、個別に同意の有無を確認
  4. 同意を得た場合のみ事業者に結果を提供

面接指導申出と同意の関係

高ストレス者が事業者に面接指導の申出をした場合、その申出をもってストレスチェック結果の事業者への提供に同意があったものとみなして差し支えない。

面接指導の申出=結果提供への同意 と解釈できます。これは、面接指導を実施するために事業者が結果を把握する必要があるためです。

結果の保存義務—5年間の管理

保存期間と根拠

項目保存期間根拠法令
ストレスチェック結果5年間労働安全衛生規則第52条の12
面接指導結果5年間労働安全衛生規則第52条の18

保存責任者の区分

同意状況保存責任者
本人の同意あり事業者が保存
本人の同意なし実施者が保存(事業者は保存場所・セキュリティを確保)

労働者の同意が得られていない場合には、事業者は実施者によるストレスチェック結果の記録の作成および当該実施者を含む実施事務従事者による当該記録の保存が適切に行われるよう、記録の保存場所の指定、保存期間の設定およびセキュリティの確保等必要な措置を講じなければならない。

保存すべき記録の内容

ストレスチェック結果の記録:

  • 検査を受けた労働者の氏名
  • 検査を行った年月日
  • 検査を行った実施者の氏名
  • 検査結果(ストレスの程度の評価結果、高ストレス者の該当有無、面接指導の要否)

面接指導結果の記録:

  • 面接指導を受けた労働者の氏名
  • 面接指導を行った医師の氏名
  • 面接指導を行った年月日
  • 面接指導の結果
  • 医師の意見

守秘義務と罰則—違反した場合どうなる?

守秘義務の法的根拠

労働安全衛生法第104条および第105条では、ストレスチェックに関わる者に対して守秘義務を課している。

守秘義務が課される対象者:

  • 実施者(医師、保健師等)
  • 実施事務従事者
  • 外部委託先の関係者

罰則規定

違反内容罰則根拠法令
守秘義務違反6か月以下の懲役または50万円以下の罰金労働安全衛生法第119条
不正な手段での結果取得6か月以下の懲役または50万円以下の罰金労働安全衛生法第119条
個人情報保護法違反1年以下の懲役または100万円以下の罰金個人情報保護法第178条

守秘義務違反は刑事罰の対象です。​ たとえ企業側の上層部や直属の上司からの要望であっても、本人の同意がない限り、結果の通知は禁止されています。実施事務従事者も医師と同等レベルの守秘義務を負っています。

民事上の責任

個人情報が漏えいし、従業員や会社に損害が発生した場合には、民事上の損害賠償責任に発展する可能性がある。この責任は使用者責任の対象にもなるため、企業も法的責任を負うリスクを抱える。

不利益取扱いの禁止—何が禁止されているか?

禁止される不利益取扱い

労働安全衛生法およびその指針により、以下の不利益取扱いが明確に禁止されている。

禁止される行為具体例
ストレスチェックを受けないことを理由とした不利益取扱い「受検しないなら評価を下げる」
結果の事業者への提供に同意しないことを理由とした不利益取扱い「同意しないなら昇進させない」
面接指導の申出を行わないことを理由とした不利益取扱い「面談を受けないなら異動させる」
ストレスチェックの結果を理由とした不利益取扱い「高ストレス者だから配置転換する」
面接指導の結果を理由とした不利益取扱い「医師の意見を理由に解雇する」

具体的に禁止される処分

  • 解雇
  • 雇い止め
  • 退職勧奨
  • 不当な配置転換
  • 不当な職位の変更(降格)
  • 懲戒処分
  • 出勤停止処分

受検拒否への懲戒処分も禁止です。ストレスチェックの受検は労働者の任意であり、受検を拒否した従業員に懲戒処分を行うことは不利益取扱いに該当します。

集団分析における個人情報保護

10人未満の集団分析の制限

集団分析を行う場合、個人が特定されるおそれがあるため、以下のルールが設けられている。

集団規模分析の可否条件
10人以上可能特段の条件なし
10人未満原則不可全員の同意がある場合のみ可能

10人未満の集団分析は、全員の同意がない限り結果の提供を受けてはいけません。​ 個人特定のリスクが高いためです。

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ミニ用語集

用語意味
要配慮個人情報人種、信条、病歴等、取扱いに特に配慮を要する個人情報(個人情報保護法第2条第3項)
実施者ストレスチェックを企画し、結果の評価を行う医師・保健師等
実施事務従事者実施者の指示のもとで事務作業を行う者。人事権を有する者は就任不可
守秘義務業務上知り得た秘密を漏らしてはならない義務
不利益取扱いストレスチェックの受検・結果・面接指導を理由とした解雇、降格、配置転換等

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MentalMapは、ストレスチェックの個人情報保護を厳格に管理するクラウドサービスです。

アクセス制御機能

  • 実施者・実施事務従事者・事業者の権限を明確に分離
  • 人事権を有する者のアクセスを自動制限
  • 本人同意のない結果は事業者画面に表示されない

セキュリティ対策

  • 全通信のSSL/TLS暗号化
  • データベースの暗号化保存
  • 全操作履歴の監査ログ記録
  • IPアドレス制限機能

5年間の記録保存

  • クラウド上で安全に5年間保存
  • 監査対応のためのエクスポート機能

同意管理の自動化

  • 結果通知後の個別同意取得フロー
  • 同意状況のリアルタイム管理
  • 同意・不同意の履歴記録

よくある質問

A. 本人の同意がなければ事業者は結果を見ることができません。労働安全衛生法第66条の10第2項で、本人の同意なく事業者に結果を提供することは禁止されています。同意は結果通知後に個別に取得する必要があります。

A. 労働安全衛生法第119条により、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。また、個人情報保護法違反に該当する場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象にもなります。

A. 労働安全衛生規則第52条の12により、5年間の保存義務があります。本人の同意がある場合は事業者が、同意がない場合は実施者が保存します。

A. 人事権を有する者は実施者・実施事務従事者になれないため、個人の結果に直接アクセスすることはできません。労働安全衛生規則第52条の10第2項で、人事権を持つ者の関与が禁止されています。

A. できません。同意は結果通知後に個別に取得する必要があり、衛生委員会での包括的な同意は認められていません。また、受検前に一括で同意を取ることも不適切とされています。

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